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第19話 誰か、俺に休みをくれえええええ!!ー水曜日のクーー ※R描写あり
「ごちそうさまでした。……では、ガウルさん、行きましょうか」
そう言って、皿を流しへ運びながら静かに立ち上がったアヴィの背中に――
俺は、言いようのないデジャヴを覚えた。
まるで、以前にもまったく同じ光景を見たことがあるような、あるいは、これが“繰り返されている”何かであるような、そんな――
得体の知れない感覚に、背筋がひやりとした。
「今日はガウルとアヴィが夜勤……?」
ちょっと待て。ってことは――
「いってらっしゃーい♡」
いつのまにか俺のうしろに立っていたクーが、玄関に向かうガウルとアヴィに、にこやかに手を振っていた。
そして、バタンと扉が閉まる音。 ……沈黙。
(ヤバい、今日ってもしかして――)
「ユーマ♡」
その声が聞こえた瞬間、俺はすべてを悟った。
恐る恐る振り返った視界に飛び込んできたのは、満面の笑みを浮かべるクーの顔だ。
「今夜は、ふたりきりだね〜♡」
「ま、待て! 落ち着けクー! 今日“クーの日”か!? “クーの日”なんだな…!?」
「えへへ♡ バレてた?」
「バレてるわ!! ってか、もう隠す気ねぇだろ!! うわぁっ!?」
逃げる暇など一秒たりとも与えられず、クーの太い腕が俺の腰をすっぽりと抱え込む。
軽く引き寄せられただけなのに、圧倒的な体格差のせいで感覚は完全に“強制連行”だった。
気づけば俺は、ベッドの上に押し倒されていた。
そのままクーの腕の中に包み込まれ、あっという間に身動きを封じられる。
「……ねぇ、ユーマ」
顔が近い。耳がかすかに触れて、息がかかる。 あったかくて、甘ったるくて、獣の匂いがふわりと混ざる。
「今日は……ユーマのこと、いっぱい可愛がってもいい?」
その囁きと同時に、クーがぐっと距離を詰めてくる。
潤んだ瞳でまっすぐ見つめてくるもんだから、俺は思わず毒気を抜かれてたじろいだ。
「ちょ、クー!? お前、マジでヤル気か!!?」
「うん♡ ユーマとしたいな♡」
ベッドの上、がっちり横抱き状態。
しかもこの状況、よくよく考えれば――
「俺の負担を軽くするための夜勤」って、めっちゃ都合のいい建前じゃねぇか!!
(確かに金銭的負担は減るかもしれんけど……そのぶん俺の負担(物理)が爆増してんだよぉ!!)
「オレ、ユーマのこと大好きだから。だから、いっぱい優しくするし、いっぱい気持ちよくしてあげるね♡」
満面の笑顔。
完全に理性のタガが外れた男の笑顔である。
「いや、いやいやいや! そういう問題じゃねえ! 俺の意思とか、意見とか!! 何処に置いてきたんだよ!!!」
「……ユーマは、オレとするのイヤ……?」
思わず沈黙してしまう。
クーとそういうことをするのがイヤか――というより、問題はそこじゃない。
俺は、どちらかといえば “ショタ派” なんだよ。
なんでこのタイミングで、そんな根本的な性癖の話をしなきゃいけないんだ。
(……進化する前のクマショタに戻ってくれ、なんて……言えるわけがねぇ!!)
けれど……。ふと、脳裏に過ったのは、この前ガウルに散々開発された時の、あの頭が真っ白になるほどの快楽だった。
デカい獣人にめちゃくちゃに愛されるあの感覚を、俺の体が……覚えてしまっている。
(……思い出すな俺のスケベ脳!! あの快感はガウルだからであって――いやでも、クーのこの身体、絶対ガウル並みにヤバい……!!)
顔が熱くなる。
自分の下心に気づいて自爆しそうになる俺の表情を見て、クーの瞳がすっと細められた。
「……ふふ、ユーマ。今ガウルのこと考えてたでしょ?」
「……なっ!?」
ぽつりと落とされたその一言に、心臓がひゅっと跳ねる。無邪気そうに笑うクーの顔が、やけに近い。
「ガウルとして、気持ち良かった……?」
「……っ」
さっきまでの柔らかい笑みはそのままなのに、クーの瞳はどこか、怪しく妖艶な光を宿していた。
「……オレも、甘えていい? ……ユーマに、いっぱい、触れたい」
耳元で囁かれた瞬間、ぞくりと背筋をなぞるような感覚が走った。
まるで、綿あめで編まれた蜘蛛の巣に絡め取られるみたいだ。
抗いたいはずなのに、抗えない。
甘くて、心地よくて、怖いくらいにやさしい。
(たけどこのままじゃ、また流される……!)
必死に理性を保とうとする俺の唇をふわっと塞ぐように、クーの唇が優しく触れてきた。
「ん……っ、んむ……ッ!?」
抗おうと開いた隙間を突くように、熱い舌が滑り込んでくる。
同時に、服の裾から入ってきたクーの大きな手が、俺の脇腹を撫で上げた。
「ユーマ、力抜いて……? ガウルより、ずっと気持ちよくしてあげるから……♡」
耳元で甘く吐き出された熱い吐息と共に、俺のズボンへ、クーの手が躊躇なく潜り込んできた。
元野生児の鋭い本能そのままに、クーの大きな手がダイレクトに俺の息子をガシッと掴む。
「ひあっ……!?!?!?」
脳天を突き抜ける直接的すぎる刺激に、声にならない叫びが跳ね上がった。
「あは♡ ここ、すごく熱くなってる♡」
「ち、ちが……ッ! お前、手順!! ムードとか前戯とかいう概念をどこに捨ててきた!!?」
「え? だって、すぐ触りたいんだもん♡」
ニコニコと無邪気な笑顔のまま、容赦なく圧をかけてしごいてくる手つき。
手加減という言葉を知らない野生の直球勝負に、俺の理性が一瞬で弾け飛んだ。
(あ……ヤバい……気持ちい……)
「ふ、ぁ……っ、…ん、ん……っ」
「……ユーマの声、エッチでかわいい♡ もっと聞かせて?」
俺の欲情をあぶり出すように掌が、絶妙な緩急で敏感な先端を撫で上げてくる。
「……っ、ん、んんんっ……!」
(やめろ、やめてくれ、そんなふうに触れられたら――)
「ユーマ……いっぱい気持ちよくしてあげる。……オレだけ、見てて?」
熱い瞳で射抜くように囁いた直後、クーは俺のズボンを下着ごと一気に引き下ろした。
何の躊躇も、ためらいもない。
あられもない姿に晒された俺自身を――クーはそのまま、大きな口でパクリと根本まで含んできた。
「ひあぁつ……っ!??!?!」
突然訪れた直接的な刺激に、全身が大きく跳ねた。
温かく濡れた口内の熱気と、包み込むような舌の感触。
クーの口の中であまりにも熱く蕩けるような温もりに包まれた瞬間、頭の中で火花が散ったような錯覚すら覚えた。
(嘘だろ……)
俺のそこを優しく包み込んだクーの口が、何度も、くちゅ、ぬち、といやらしい音を立てながら、舌先で丁寧に味わうように責めてくる。
「んぁ……っ!」
熱い口内と、吸い上げられる快感に、あっという間に脳のキャパがオーバーする。
(待て待て待て! 巧い! 巧いけど!! 元野生児のくせに、なんでこんなフェラが上手いんだよ……!!)
恥ずかしさとあまりの気持ち良さに顔が爆発しそうだ。
押し返そうとクーの頭に手を伸ばしたはずなのに、力が入らず、逆に彼の柔らかい長髪をぎゅっと掴んでしまう。
「ク、クー……っ、おま……手加減……っ!」
言葉とは裏腹に、身体は完全に降参状態だった。
「ショタ派」としてのプライドはどこへやら、「もっと強く吸ってほしい」なんていうスケベな下心が、脳裏を支配していく。
クーの唇が、さっきよりも深く吸いつき、同時に指先がそっと根元を押さえつける。
身体の奥底で押し留められていた熱が、行き場をなくしてふっとせり上がる。
自分の意思とは裏腹に、腰がわずかに跳ねた
「可愛い声……もっと聞きたい……ユーマが感じてくれてるのが伝わってきて……オレもすごく幸せなんだ」
そう囁く声が耳をくすぐる。
次の瞬間、熱を帯びた舌先が触れた。
柔らかく、円を描くように――まるで慈しむような動きで、じっくりと先端を撫でられていく。
思考は霞み、感覚だけが際立っていく。
ただひたすらに、静かに波紋のように広がる快感に、身を委ねるしかなかった。
「あっ……ん…だめ、だっ……もぅ……おかしくなる……っ」
必死に抗っても、彼はどこか楽しげに微笑んで――そのまま、さらに深く咥え込んでいく。
喉奥に届いた瞬間、ぴたりと止まり、まるで計ったような圧で締めつけられた。
(っ、あ……!)
たまらず目を見開いた俺に、クーは上目遣いで微笑みながら「……気持ちいい?」と問いかけるような眼差しを向けてくる。
その表情が、あまりにも艶めいていて――思わず息を呑んだ。
まるで俺の反応を楽しむように、クーの舌先が慎重に、けれど確実に、敏感な場所をなぞってくる。
一瞬、全身がびくりと跳ねた。
反射的にシーツを握りしめた手に、知らず知らず力がこもっていた。
「……っ、ん……ぁ……あ……っ……」
漏れ出た声は、押し殺したはずなのに、夜の空気に溶けていくように響いた。
クーはそんな俺の様子に、嬉しそうに細めた目で見上げてくる。
そして、さらにゆっくり、丁寧に――唇と舌で、愛おしむように愛撫してくる。
ときに優しく包み込むように、
ときに焦らすように、先端だけをすくい上げるような動きで。
「……クー……そこ……」
言葉にならない懇願が、喉の奥で震える。
「ココ好き?」
尋ねられても、もう声にならなかった。
喉の奥で息が絡み、かすれた吐息が零れるばかり。
「もう……だめ……」
情けなく零した言葉すら、クーには嬉しそうに受け止められて――
吸い尽くされるような熱に呑まれて、気づけば、限界なんてとうに越えていた。
「あっ、クー、出る……っ! だめ、出ちゃう……ッ!」
限界を迎えた俺が叫ぶのも聞かず、クーは口を離すどころか、さらに深く奥まで吸い上げてきた。
「やっ、あっ……! やだ、も、っ、あぁあっ……!!」
直後、弾けるように溢れ出した俺の熱い熱流を、クーは一切躊躇することなく、その口内でダイレクトに受け止める。
「ん……っ、んぐ、……ちゅ……♡」
何度も喉を鳴らして、一滴残らずゴクゴクと飲み干していく音。
(あ——————っ!!??!??)
賢者タイムに突入した俺の脳内で、絶叫が響き渡る。
全部綺麗に味わい尽くしたクーは、口元をぬぐうどころか、ペロリと満足そうに舌で唇を舐めた。
「ふは……♡ ユーマの、飲んじゃった♡」
「飲んじゃった♡ ……じゃねぇよ!! バカ!! 出せ! 吐け!!」
「え〜? もったいないじゃん。ユーマのだもん♡」
「おまえなー……」
呆れる俺をよそに、クーは俺の名前をやさしく呼び、そっと抱きしめてくる。
「……ユーマ」
けれど、ふいに――太ももに、固くて熱を持った“何か”が押し当てられた。
(……え?)
明らかに、異質な感触。
熱く、硬く、そして――尋常じゃない存在感。
(ちょっ、まって……まさか、これって……)
脳が、目の前の事実を処理しきれずにフリーズする。
視界に映るよりも先に、肌がその“異物”の圧を正確に感じ取っていた。
(……知ってた。知ってたけど……!)
呼吸が完全に止まった。
理性が警鐘を大音量で鳴らしているというのに、クーの柔らかな声が、そのすべてを無慈悲に上書きしてくる。
「ユーマのここに、オレの挿れていい……?」
「……っ!」
太ももの奥をそっと撫でられる。
もう片方の手が頬に添えられ、視線を絡められる。
(ど、どどどどうする……! 俺……!!)
頭では「無理だ」と叫んでいるのに、クーの熱と想いに包まれているうちに、恐怖と同じくらい――いや、それ以上に、「このまま受け入れたい」という気持ちが膨らんでいた。
「……嫌なら、やめるよ? ムリにしたくないから」
すっと目を伏せ、心底申し訳なさそうに言ってくるクー。
……ズルい。そんな顔されたら、断れるわけねぇだろ。
第一、さっきあれだけ丁寧に気持ちよくしてもらったのだ。
“お口キャッチ”までさせておいて「俺はやりませ〜ん」なんて、男がすたる。
(あーもう! クソッ! 腹くくるしかねぇ……!!)
「……ったく、わかったよ!」
半ばヤケクソで叫ぶと、クーが「え……?」と目を丸くした。
「いいから! 挿れろ! ただし優しくしろよ!? 手加減忘れたら一生口きかねぇからな!!」
顔を真っ赤にして指を突きつける俺を見て、クーの驚いた顔が、みるみるうちに歓喜と熱を帯びた「男の顔」へと変わっていく。
(あ、ヤバい……俺、自分で猛獣の檻の鍵開けちゃったんじゃねぇか……!?)
「……ユーマ、大好き♡ 絶対、大事にするね……っ」
クーが、ぎゅっと頬にキスを落とす。
その唇が、愛おしさを滲ませるように、ぬくもりを残していく。
彼の手がゆっくり腰に滑り、まるで体温を分け合うように包み込んでくる。
「ふっ……」
小さく息を漏らすと、それに応えるように彼の唇が首筋へと降りてきた。吸いつかれるたびに身体の力が抜けてしまう。
「ユーマに辛い思いさせたくないから、少しずつ、解すね?」
その言葉と同時に、クーの指先がゆっくりと俺の体内に侵入してきた。
「ん……っ」
ひんやりと湿った感触に身体が一瞬強張る。それが潤滑油だと分かるまで数秒かかった。
(……異世界に、そんなのあったんだ。
っていうか! エロが文化を発展させるって言うけど――マジで、どこの世界でもそうなんだな!?)
最初は、そんなくだらないツッコミで必死に現実逃避をしようとしていた。
けど――すぐダメになった。
クーの指がゆっくり奥を撫でる度に、背筋を甘い痺れが駆け上がり、息が止まりそうになる。
(っ……優し……すぎるだろ、クソ……ッ)
なのに、芯の部分には確かな欲があって――
ひと撫でするたび、俺の中の“平静”は、じわじわと溶かされていく。
内壁を傷つけないようにゆっくりと動かしながらも、時折核心を避けるように掠める。
「痛くない?」
心配そうに覗き込む瞳には俺しか映っていない。
「だいじょうぶ……」
嘘ではない。まだ異物感はあるものの、痛みはまったくない。
彼は、ほっとしたように微笑むと、今度は二本目の指を添えて再び入ってくる。
最初よりも抵抗が大きいが、それでもクーの動きは慎重そのものだ。
クーの指先が内側のある一点を掠めると
「ひっ!」
背筋に電流のような衝撃が走り抜けた。全身が痙攣し反射的にクーの肩を掴んでしまう。
「……ここ?」
確認するように何度も同じ場所を優しく圧迫される度、脳天まで突き抜ける快感に襲われてしまう。
「ぁ……クー……そこは、だめ……っ」
喘ぎ混じりの制止の声も、彼には届かないのか、それとも届いたうえで無視されたのか。
クーの指先は、まるで意志を持っているかのように緩むことなく動き続け――むしろ、その動きは徐々に熱を帯びていった。
三本目が加わった瞬間、微かな抵抗が音もなくほどけてゆく。
深く、奥まで――優しく、でも確実に侵されていく感触に、もう何も考えられなくなる。
身体の奥底で、甘い痺れがじんじんと広がっていき、知らぬ間に声まで蕩けていた。
「……く、ぁ……んっ……ああ……っ」
息が漏れるたび、体が勝手に応えてしまう。
クーの指が動くたび、熱と快感が波のように押し寄せてきて――
頭の芯まで、とろとろに溶かされていくようだった。
――ああ、もう、ダメだ。
クーに触れられて、愛されて、満たされるって、こういうことだったんだ。
抗おうとしてたのが、どれだけ無意味だったかを今さら思い知らされる。
ただ、感じることしかできなくなった身体で、俺はようやく実感する。
心も、身体も――すっかり、彼に委ねてしまっているんだと。
クーは俺の腰を抱いたまま、静かに身体を密着させてきた。
ぬるんと熱を帯びた箇所に、硬くなった彼のそれが押し当てられ、びくりと身体が震える。
「……いくね」
囁くような低音が耳元に落ちた直後――
ぐっと押し込まれるような圧迫感が走った。
「っ……!」
指とはまったく違う。
ずっしりとした質量が、入り口をぐいぐい押し広げながら迫ってくる。
まだ奥まで来ていないのに、すでに中が張りつめるほどの存在感があった。
「……ぅぐっ……!」
予想以上の違和感と、つい声になって漏れる苦しさ。
呼吸が浅くなり、眉間にしわが寄る。
頭がぐらつくほどの感覚に、思わずシーツを掴んだ。
「ユーマ……!? ごめん、痛い……?」
クーが慌てたように腰の動きを止める。
額には汗が浮かび、唇を噛むようにして俺の顔を覗き込んできた。
「だ、大丈夫……でも……思ったより……きつい……」
ようやく絞り出した言葉に、彼は息を飲む。
その奥に宿るのは、自分を責めるような戸惑いと、どうしようもない葛藤だった。
「まだ、半分も入ってないんだけど……。無理に動かすと、ユーマが壊れちゃいそうで……」
焦り混じりの声音。
こちらを気遣いながらも、クーもまたどうしようもない欲と熱に呑まれているのがわかった。
彼の体温が、肌を通してひしひしと伝わってくる。
「ごめん……今日は、ここまでにしよう」
彼がそう言って、ゆっくりと腰を引いた。
抜けていく瞬間――
ズルリと内側を撫でながら出ていく感触に、また違った意味で息を呑む。
「っ……ぅ、ん……」
解放されたはずなのに、残る熱と疼きがやけにリアルで、やるせない。
「ごめんね、ユーマ……。せっかくユーマがいいよって言ってくれたのに……」
申し訳なさそうに眉を下げ、クーが俺の額にそっとキスを落とした。
おい、そんなしゅんとした顔されたら、こっちが申し訳なくなるだろ。
「いや……別に、クーが謝ることじゃねぇよ……」
気まずさに目をそらすと、彼の手がゆっくりと俺の濡れた前髪を梳き上げていく。
指先から伝わる体温と優しさに、荒れていた胸の奥がじんわりと温かくなっていくのが分かった。
静かに重なり合う額と額。
肌と肌を寄せ合い、互いの息遣いを重ねる。
(……とはいえ、太ももに当たってるコレ、全然収まる気配ねぇんだけど!?)
気まずい沈黙の中、太ももにぐりぐりと主張してくる凶悪な熱に、俺の理性が再び冷や汗をかき始めた、その時だった。
「……ユーマ、別の方法にしよう?」
「え?」
クーは俺の腰にそっと手を添えて、横向きにされたかと思うと、そのままそっと背後から腕がまわる。
俺の体を優しく引き寄せ、横向きのままでぴたりと背中に密着してきた。
脚を優しく開かされる。
「こうしたら……痛くないと思う」
中に入れるわけじゃない。それでも、クーの熱が俺の太腿のあいだににゅるりと滑り込み、ぞわりとした感覚が背中を駆け抜ける。
体勢のせいか、それとも内腿に押し当てられている感触のせいか――恥ずかしさと、どうしようもない期待が入り混じって、胸の奥がざわついた。
「ん……クー……なんか、変な感じ……」
「うん、でも……気持ちいいでしょ?」
ふざけるような口ぶりとは裏腹に、クーの動きはどこまでも丁寧で、優しかった。
脚を閉じた俺の腿のあいだから、互いの熱が擦れ合い、汗ばんだ肌がぬるりとすべる。
太腿越しに伝わる鼓動のひとつひとつが、まるで直接触れ合っているみたいで、息が浅くなる。
「ん……ぁ、く……クー……」
太ももの間に挟み込んだ熱と、さらにそれを上から逃がさないように重ねられたクーの太もも。
密着した体温と押し寄せる重い圧に、ふっと息が漏れた。
ひと撫で、ふた撫でと、緩やかに腰が擦れ合うたびに、背中にぴたりと触れているクーの熱がどんどん上がっていくのがわかる。
肌の触れ合う音、汗の匂い、吐息の温度――すべてがじんじんと体の芯を焦がしていく。
そのとき、不意に――クーの唇が、俺の首筋にそっと触れた。
「……可愛い、ユーマ……」
低く甘い囁きのすぐあと、肌にぴりりとした痛みと熱が走る。
小さく噛まれたのだと気づいた瞬間、身体がびくっと震えた。
「ひゃ……っ」
首筋に残った歯型を舌でやさしくなぞるように舐められるたび、羞恥と快感が混ざり合って頭がぼんやりする。
舌が耳の後ろを撫でたあと、ゆっくりと肩甲骨へと降りていく。
「っ……あ、バカ……く、くすぐったいって……」
恥ずかしさに身をよじる俺を、クーの腕がさらにきつく抱きしめてくる。
背中に当たる胸の鼓動が速い。
俺と同じくらい、クーも――きっと、必死なんだ。
「ユーマ、好きだよ」
その言葉が、決壊の合図だった。
クーの腰の動きが、少しずつ、確かに激しさを増していく。
横向きに寄り添っていたはずの体勢は、
いつのまにかじわじわと押し倒されるように傾いていき、
俺の体は次第に、ベッドへとぎゅうぎゅうに押し付けられていった。
背中に感じるクーの体温はますます熱を帯び、
彼の硬さが腿の内側を擦る感触が、いやでも鮮明になっていく。
「ん……く、ぁ……っ」
すれるたび、肌の奥がじんと痺れるように疼いた。
太腿の内側には、互いの熱がとろけるように滲み、どこか、くすぐったくて、でも逃れられない感覚がそこにあった。
(ダメだ……もう、わかんなくなる……)
声が勝手に漏れる。
なのに止められない。
まるでクーの熱に追い立てられるように、俺の奥まで痺れていく。
「……ふぁっ……あぁっ……クー……もうダメ……!」
「オレも……一緒にいこっ」
震える声が交差する。耳元に触れたクーの熱い吐息に、心までかき乱される。触れ合う体温が溶け合い、鼓動が激しく響いた。
クーの掌が下腹をなぞりながら滑り降りていく。
次の瞬間、熱を帯びた指先がためらいなく俺を包んだ。
ぞくりと背筋をなぞる快感に、声が抑えきれず漏れる。
「……っあ……、 それ反則……っ」
唇が微かに震える。
与えられる熱に抗えず、思わずシーツをきゅっと掴んだ指先に、力がこもる。
次の瞬間――深く触れられた場所から甘い衝撃が走り、反射的に身体が跳ね上がった。
「っ……あ、や……っ」
「ユーマ……可愛い……もっと感じて」
クーの動きが加速するにつれて俺の意識は霞んでいった。彼の汗ばんだ手が俺の腰を優しく支えている。
「っ……クー、もう……くる……っ! 」
限界が迫り、言葉も霞んでいく中で、クーが静かに言った。
「ユーマ、オレも、イきそう……っ、手……貸してくれる?」
枕にしがみついていた俺の手に、そっと――クーの手が重なる。
まるで優しく包み込むように、ぎゅっと握られた次の瞬間、彼の動きがピタリと止まり、全身がびくりと震えた。
「ん……っ! ユーマ……!」
俺の脚のあいだから伝わる熱が、どくんと脈打つ。ひとつになる感覚に包まれて、俺の体も大きく震えた。
「んっ───……!」
同時に俺も限界を迎え、全身が痺れるような余韻に包まれた。
まだ息を整える間もなく、唇がそっと重なる。
深く、熱く、それでいてひどく優しいキスだった。
しばらくの沈黙のあと、クーがそっと額を俺の肩に押し付ける。
「……ありがと。すっごく……気持ちよかった♡」
「……俺も……ちょっと、驚いた……けど」
クーが満足げに笑って、愛おしそうに俺の髪を撫でてくる。
その甘さに浸りかけたのも束の間、脚のあいだに残るぬるりと重い感触が生々しくて、ふと視線を落とした。
……そこには、ローションと二人分のアレで広範囲にドロドロに湿り、凄惨なことになっているシーツがあった。
(……あー、もうっ! シーツぐっちゃぐちゃじゃねぇか……ッ!!)
中に入ってないのに、この大惨事。
男気見せて格好つけた挙句、素股でトロトロに蕩けさせられてシーツを惨殺した事実に、俺は両手で顔を覆いたくなった。
「……クー、これどうすんだよ……」
「え? うーん、明日いっしょに洗おっか♡」
「そうじゃねぇよ! 俺は明日、ガウルとアヴィにどんな顔すりゃいいんだ……ッ!?」
「それよりユーマ、ぎゅーってして♡」
「……はぁ、マジでその図太さが羨ましいよ……」
呆れ混じりのため息をつきつつも、すり寄ってくるクーの背中に回した腕には、どうしてもぎゅっと力がこもってしまうのだった。
***
「……ガウルさん、それ、もう絶命してます」
夜の静寂を破って響く、剣が肉を裂く鈍い音。
ガウルの刃は、既に動かぬ鳥竜種・レグノトラドの胸に深々と突き立てられていた。
その巨体は微動だにせず、紅い炎を宿したはずのトサカも、今はただ静かに崩れている。
それでもなお、彼の手は力を込めたままだった。
(……まただ)
その荒い呼吸、研ぎ澄まされた獣の目。
戦っているのは魔物じゃない。
自分の中に溜まった、鬱積した欲と焦燥だ。
アヴィはため息をついた。
「……ご主人様を独り占めできなくて、苛立つのもわかりますけれど」
ささやくように言えば、案の定、睨み返してくる。
返り血を浴びたままのその目は、まるで睨んでいる対象が“自分”じゃないかのような、妙に焦点の合わない光を宿していた。
(……ほら。やっぱり、わかりやすい)
「……黙れ」
唸るような声が返る。
それもまた、怒りというよりは、言葉にできない欲の裏返し。
アヴィは肩をすくめ、わざとらしく微笑んだ。
「図星でしたか。けれど、あなたはもう一度、抱いたのでしょう? それなのにまだ、足りないんですか?」
ガウルの怒気はもう、皮膚越しに伝わるほどだった。
それでもアヴィは引かなかった。引くどころか、むしろ一歩、踏み込む。
わざと目線を逸らし、ひとつため息をついてから——
「それとも、一度抱いて、惜しくなったんですか?」
とても柔らかい声だった。
剣を構えている相手に、白い手袋で頬をなぞるような声音。
だがその言葉の中身は、鋭く毒を含んでいた。
ガウルの眉が、ぴくりと動いた。
アヴィは知っていた。
あの一夜で、ガウルが「何かを得た」のではなく、
「何かを知ってしまった」のだということを。
——あの人は、手放せば、すぐに誰かのものになる。
誰にでも、あんな声を上げて、名を呼んでしまう。
だからこそ、惜しくなる。
たった一度では、足りなくなる。
——ずっと、欲しくなる。
アヴィは、静かに口角を上げた。
「僕は楽しみですよ。ご主人様が、どんなふうに乱れて、どんなふうに鳴くのかなって」
その瞬間だった。
「貴様……ッ!」
怒声とともに、ガウルの手がアヴィの胸倉を掴み上げた。
背後の冷たい空気が、びり、と張りつめる。
アヴィの体はわずかに浮き、背中が木の幹に叩きつけられる。
(痛いな……相変わらず、加減を知らない馬鹿力だ)
けれど、彼は顔を歪めなかった。
むしろ、口元にうっすらと笑みを浮かべたままだった。
「……僕に、八つ当たりしないでください」
柔らかい声で言う。まるで、無関係の傍観者のように。
「もう決まったことなんですから。今さら、無かったことになんてできませんよ?」
ガウルの目が、獣のように血走る。
けれどその視線の奥には、怒りだけではない——
焦り、悔しさ、そしてなによりも、渇望があった。
アヴィは、それを見ていた。
見ながら、自分の胸の奥にも同じ色の“なにか”が疼いていることを、薄々、感じていた。
(ほら、やっぱり……同じじゃないですか、僕たち)
その自覚が、たまらなく気持ち悪くて、でも——
どこか、心地よかった。
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