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第21話 誰か、俺に休みをくれえええええ!!④―日曜日の俺―

腰が……!!マジで!!ヤバイ……!!! ああほんと、ヒール魔法が存在しててよかったって、心の底から思った……。 なかったら死んでた。俺の尊厳が。完全に。 いや、何がとは言わない。言えない。けど察してほしい。 だって―― ガウルはとにかく激しいし! アヴィはもう……しつこいの極みだし!! クーに至っては……デカいんだよ……!!! スズメバチに囲まれたミツバチの心境って、こんな感じなんだろうな。 抵抗する間もなく丸め込まれた理性が、まるで餌みたいに食われていく感覚だった。 誰か頼むから、俺に休みを……!!! 人権という名のふかふかの布団で、三日三晩寝かせてくれえええええ!!!! そう思っていた、ある日曜日の昼下がり。 ガウルが分厚い手で俺の肩を揉み、アヴィが丁寧に淹れた香り高い茶を差し出し、クーは団扇で一定のリズムで涼を送ってくれる。 ――なんだこの状況。どう考えてもおかしい。 普通に考えたら、筋肉×3による過剰なホスピタリティは“カオス”のはずなのに。 それを今、俺は“平和”とすら感じている。 ……いや、待て。 その感覚、たぶんもう末期。 「……え、なんか今日は……平和?」 静かな時間。 誰も襲ってこないし、押し倒されないし、妙に優しい。 「……え、ちょ、なにこれ……  もしかして、俺の人権、ようやく認められた……!?」 満面の笑みで茶をすすり、のびをする俺。 ──幸せってこういうことなんだなぁ。 これが……筋肉ハーレム……ってやつか? いや、いやいや、なんだよそれ。 肩はガッチガチ、茶を淹れる手つきすら無駄に男前、団扇の風圧がちょっと強ぇんだわ! 違うんだよ、俺が本当に求めてたのは―― もちもちふわふわショタハーレムだろうがァアアアア!!! 返してくれよ俺の安らぎ!! 砂糖菓子みたいな日々をッ!!! ちょっと前まで――俺の家は、 ちいさな可愛い子たちが集まる「保育所」みたいな場所だったはずだろ!? ギルドの依頼をこなしながら、皆で食卓を囲み、夜はくっついて一緒に眠る。 小さな手、小さな寝息、小さな幸せに包まれていた……はずだったのに。 それがなんで今、軍人の詰所みたいになってんの!?!? 甘え声はすっかりバリトンになり、筋肉の圧で空気が揺れる。 かつて「おんぶ〜」とせがまれた背中に、今は「担がれる」状態でベッドへ運ばれ、 耳元で「今日は下半身、集中して鍛えようか♡」なんて囁かれたとき、悟った。 ――ここはもう、平和じゃない。 筋肉による支配が始まっている……。 それなのに。 ガウルにお姫様抱っこされ、 アヴィに手を優しく握られ、 クーの分厚い胸板にぎゅっと包まれるたび、 俺の中の“乙女回路”が、思わず「……ちょっと良いかも」なんて誤作動を起こしてしまう。 おい待て俺。 この状況を“心地いい”とか思ってる時点で、たぶん一番ヤバいの、俺じゃないか? なんでこうなった、俺の人生。 回復術士のはずが、なんでこんなにも筋肉に包囲されてるんだ。 でも。 ほんの少しだけなら…… もう少しだけなら……この筋肉に、甘えてもいいですか。 そして夜になった。 「……ふぁぁ……今日はみんな優しかったな……。家事も全部やってくれたし、さすがにもう……普通に、寝ていいよな……?」 ふかふかの布団に沈み込む幸せに浸っていたそのとき。 背後で「カチャリ」とドアの閉まる音がした。 「……え?」 振り返った瞬間――その闇の中、三対の光が浮かび上がる。 まるで夜行性の獣のように、鋭く、光る瞳。 姿ははっきり見えないのに、筋肉の圧だけは確かに感じる。 “準備万端”なマッチョ獣人3人組が、俺を見下ろしていた。 ガウルが枕元にしゃがみ込み、低く囁く。 「ユーマ、今日は……」 アヴィがすかさず、俺の手を取りながら言う。 「“全員で”癒しますよ」 クーは団扇をそっと置き、ニッコリと微笑んだ。 「優しさの本番はこれからだよ♡」 空気が……重い。いや違う。筋肉の密度が高いだけだ。 「ま、待て! さっき肩揉んだだろ!? 茶も飲んだし、団扇の風も受け取った!! もういいだろ!? ヒーリングは完了したよな!?」 ガウルがムキッと腕を鳴らす。 「今度は心のコリをほぐしてやる」 アヴィがベッドの縁に手をかける。 「身体と心はセットです。分離不可です。異論は認めません」 クーが俺の足をつついてくる。 「まずは下半身から整えようね♡」 「だ、だれかぁああああああ!!!  俺に!!! 休みをくれええええええええええ!!!!」 そして俺は、 今日もまた願うのであった。 すべてが終わったあとには―― ヒールじゃなくて、リザレクションを施してくれ……と。 お願いだ……俺を、生き返らせてくれ。 \\\ 完 ///(いや続く)

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