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第84話 仔竜の贈り物⑩ ※R描写あり

(※性的描写あり。苦手な方はご注意ください) ***  あっという間だった。  シャツもズボンも容赦なく剥ぎ取られ、湿り気を帯びた布地が皮膚に張りついたまま引き剥がされる。逃げ場を失った下着ごと、足元へと引きずり落とされ――気づけば何も身につけていなかった。  むき出しになった肌に冷たい空気が触れた瞬間、びくりと身体が強張る。熱を残したまま、逃げ場のない感覚だけが際立っていった。  「ちょっと待てって! おい!」  抗議の声は虚しく宙に消えた。  ガウルは無言のまま距離を詰め、腰元でベルトを外す金属音を響かせる。次いで、革の重たい腰帯が床に落ちる音が、やけに大きく部屋に反響した。  シャツのボタンに伸びる指は乱暴で、引き千切るように次々と外されていく。その手つきには、隠しきれない焦りと、抑えの利かない衝動。  全裸のガウルが影のように覆いかぶさってくる。盛り上がった筋肉の稜線が月明かりに照らされ、その存在感だけで息が詰まった。彫像めいた胸板を伝った汗が、ぽたりとシーツに落ちる。  「……ユーマ」  名を呼ぶ声には、いつもの余裕がなかった。  飢えた獣のように光る瞳が、逃げ場を探す俺を捉えて離さない。一瞬、背筋を走る恐怖。それでも視線を逸らせず、身体が強張ったまま動けなかった。  「もう……限界だ」  「——ガウル……」  言い終えるより早く、ガウルの両手が逃がすまいとするように俺を包み込んだ。  (……ああ、ここまで来たら、もう抗えない)  そう悟った瞬間、肩から力が抜ける。俺は抵抗をやめ、その腕の中に身を委ねた。  荒々しく唇が重なり、呼吸を奪うほどの強い口づけが降りてくる。舌の動きは拙いほど必死で、乱暴なのに――そこには抑え込まれていた想いが、堰を切ったように溢れていた。  「ん……っ! ふ……!」  苦悶と快楽の狭間で揺れる肌をガウルの熱い掌が這う。腹筋から脇腹へ、そして胸へと辿り着いた指先が尖った乳首を捉えた。  「あ……っ!」  鋭い刺激に身体が跳ねる。ガウルは構わずもう片方も同じように責め立てる。指の腹で押し潰し、爪の先で引っ掻き、時には強く捻り上げる。痛みと快感の境界線が曖昧になっていく。  「……ふっ……んぅ……っ!」  ガウルの唇が首筋から鎖骨へと滑り下り、乳首を摘まれたまま、舐めあげられる。湿った音が耳を犯す。  時折、甘噛みするように先端に歯が触れ、そのたび背筋がびくりと震えた。  (……やば、気持ちいい……)  気づけばイッたばかりだというのに、もう愚息が復活し始めている。自分の節操のなさに内心呆れながら、それでも俺は、ガウルの一方的な振る舞いに身を委ねるしかなかった。  そのうち大きな手が腹を滑り降り、最も敏感な場所を撫で上げた。  「あ……ッ!」  既に硬く張りつめたモノを容赦なく握り込まれる。指の輪が根本から先端まで何度も往復し、その容赦のない刺激に抑えきれない嬌声が漏れ、俺は咄嗟に自分の口元を、両手で覆った。  「……口を塞ぐな」 ​ ガウルは低い唸り声で命じる。  「……だって、皆に聞こえちゃうだろ」  俺が抗議すると、ガウルはフッと鼻で笑った。まるで、俺の抵抗が全て無意味だと知っているかのように。  「聞かせてやればいい」  その声は、囁きであるにも関わらず、まるで絶対的な命令のように俺の耳朶を貫いた。  「どうせあいつら、俺たちのことは全部知ってる。今更、あんたが声を隠したところで、どうにもならん」  「……っ、でも」 ​ ガウルの手が、俺の口元を覆う手を無理やり引き剥がし、頭の上で縫い留めるように片手で拘束した。  俺を見下ろすガウルの黄金の瞳には、夜の闇と同じ色の、獰猛な独占欲が揺らめいていた。  低く、甘く、そして容赦のない声。  「……隠すな。俺だけの声を聞かせろ」  「あ……っ、やだっ……」  制止の言葉も虚しく、縫い留められた手首はビクともしない。必死に唇を噛んで声を堪えても、喉の奥から甘い喘ぎが溢れ、身体は絶頂に向かって高昇っていく。  ガウルの動きは巧妙で、寸前で刺激を弱め、波が引いたところで再び強く扱く。その繰り返しに理性が崩れていく。  「出すな……まだ早い」  「無理……っ、もう、おかしくなる……っ!」  涙声での訴えに、ガウルの動きが僅かに鈍った。だがそれも一瞬だった。すぐに激しさを増した扱きに伴って、腰が浮き上がる。  「も……イかせて……っ! お願い……っ!」  半ば泣きながら懇願すると、ガウルの喉仏が大きく動いた。次の瞬間――  「ッあ、あああ——!」  背中が弓なりに反る。熱い迸りが放出される感覚と共に、視界が白く染まった。ガウルは最後の一滴まで搾り取るように根元から絞り上げてくる。  「うぅ……っ」  息も絶え絶えになった俺の上に、熱い息を吐くガウルの顔が迫ってきた。汗で光る額が触れ合うほどの至近距離で、燃えるような眼差しが注がれる。  「俺もいいか……?」  掠れた声で告げると同時に、ガウルは俺の両脚を大きく開かせた。濡れた先端が太ももの内側に擦りつけられる。火傷しそうなほどの熱を感じた直後――。  「——!」  痛みと圧迫感に声が詰まる。無理やり押し広げられる感覚に全身が強張った。だがガウルは止まらない。むしろ一気に最奥まで貫いた。  「あああああっ!」  悲鳴に似た声が漏れる。あまりの衝撃に涙が溢れる。だが痛みの中にも異様な快感が混ざっていた。ガウルの雄々しい存在を体内で感じること自体が快感になっているのだ。  「ユーマ……っ」  苦悶と恍惚が入り混じった声で名を呼ばれながら、ガウルの抽送が始まった。最初は慎重だった腰使いも、次第に荒々しくなる。ベッドが軋む音と肌同士がぶつかる音が混ざり合う。  「ひぃ……っ! んあ……っ!」  声を抑えられない。ガウルの律動に合わせて勝手に声が溢れる。硬質な熱塊が内部を擦り上げるたびに背筋を電流が走り抜けた。壁面を押しつぶすような強烈な刺激に意識が飛びかける。  「ガウル……っ、気持ちぃ……っ!」  思わず本音が零れた。その言葉にガウルの動きがさらに激しくなる。腰を打ち付ける勢いが増し、繋ぎ目からは湿った音が立った。  「……ッ、ガウル……! もっと……っ!」  恥も外聞もない求めに応えるように、ガウルの猛攻は加速した。逞しい腕が俺の腰を掴み、引き寄せる。より深く、より強く。二人の体温が溶け合う感覚。  「ガウル……っ、好き……っ!」  その一言に、ガウルの呼吸が一瞬止まり、瞳孔が僅かに広がった。次の瞬間、信じられないほどの圧倒的な衝撃が貫いた。  「——ッ!」  声にならない叫びを上げながら絶頂に達する。同時に体内で熱い迸りを感じた。ガウルの欲望が大量に注ぎ込まれていく感覚。二人は折り重なるように果てた。  「……ユーマ」  かすかな声が耳に届いた。柔らかな唇が額に触れる感触。下腹に鈍い圧迫感が残るまま、ガウルがゆっくりと身を引く。それでも完全には抜けずに先端が内部に留まったまま、互いに荒い息遣いが続いていた。  俺は泥のようにベッドに沈み込み、ぼんやりと天井を見上げていた。  額を伝う汗を拭うことさえ億劫だ。全身を襲うのは、激しい嵐が過ぎ去った後のような気だるさと、芯まで痺れるような充足感。  (……やっと、寝れる……)  疲労困憊の身体は正直だった。  隣にあるガウルの過剰なまでの体温と存在感を心地よい毛布のように感じながら、俺の意識は抗いがたい睡魔に引きずり込まれ、とろりと溶けかけていく。  その時だった。 ​ 「……足りない」  耳元で、低い――地を這うような唸り声が鼓膜を震わせた。  「……え?」  背筋に悪寒に近い戦慄が走り、俺は重いまぶたを無理やりこじ開けて目の前を見る。  そこには、闇の中でギラリと異様な光を放つ、二つの灯火があった。  収縮した瞳孔。  獲物を前に舌なめずりをするような、理性のタガが外れた完全な獣の眼差し。  「……おい? ガウル、お前……何言って――」  問いかけても返事はない。体内に残っていたガウルの一部がゆるやかに動き出したのだ。ぬるりとした感触と共に先程までの強烈な圧迫感が蘇る。ゆっくりとした律動が始まり、結合部から湿った音が漏れた。  「う……あっ……待てって……まだ……っ!」  身体は既に限界を超えているのに反応してしまう。ガウルの動きは緩慢でありながら執拗だった。引き抜きかけてはまた奥深くまで戻り、内壁を丹念に擦り上げる。三度達した身体は過敏になっており、些細な動きにも神経が痺れる。  「おい……本当に勘弁しろって……。明日起きれなかったら、どうすんだよ……」  か細い抗議は全く通じなかった。むしろ俺の言葉に逆らうように、ガウルの動きが少しずつ速くなる。腰が持ち上げられ、正常位だった体勢から対面座位へと導かれた。両脚がガウルの腰に巻き付く格好になり、自分の体重でより深く飲み込んでしまう。  「ひっ……!」  背中が深く反り返る。  それでも、背後から回されたガウルの剛腕が、腰ごと抱え込むように支えていた。揺さぶられる度に深く穿たれ、新たな快感の波に飲み込まれていく。  「やだ……っ…これ……っ!」  涙声の訴えも虚しく、ガウルの両手が俺の腰を掴み上下に揺さぶり始めた。自重による重力と相まって猛烈な衝撃が身体中を駆け巡る。肉同士がぶつかる音が部屋中に響き、粘液が泡立つ卑猥な音が漏れた。  「もう……無理……っ! イったばかりなのに……また……!」  過敏になった身体は容易く高みへと連れ去られる。ガウルは容赦なく攻め続けた。硬く張り詰めた熱塊が執拗に最奥を突き上げ、内壁を擦り上げる。その度に全身が震え、声が枯れ果てる。  「んぁ……っ! ふぅ……っ!」  意識が白濁していく中で、俺は絶望と共に悟った。  この規格外の体力(スタミナ)を持つ獣にとって――「一回」など、ただの準備運動に過ぎないということを。  獣人としての底なしの「本能」。  狩人としての執拗な「獰猛さ」。  その二つが融合したガウルの渇きは、俺が三度果てたくらいで収まるような、生易しいものではなかったのだ。  尽きることなく湧き上がり続ける熱が、再び俺を捕食しようと鎌首をもたげている。  (……嘘だろ……?)  俺の思考は、そこでプツリと途切れた。  「ひぃ……っ! ダメ……っ! イく……っ!」  四度目の絶頂が訪れてもガウルの動きは止まらない。むしろ絶頂時の痙攣を利用して更に激しいピストンを加えてきた。精を放ったばかりの敏感な箇所を容赦なく嬲られ、視界が白く点滅する。  「うぅ……っ! やめ……っ! 死ぬ……っ!」  泣き叫びながらも身体は裏切り続ける。ガウルの剛直が内壁を抉る度に新たな快感が生まれ、意思とは関係なく腰が蠢いた。全身がガウルを求めているようで情けない。それでも止められない快楽の渦に飲み込まれていく。  「……っやああ……っ!」  もう何度達したのか分からない。俺の意識は、完全に吹き飛んだ。  視界は真っ白に塗り潰され、宙に放り出されたような錯覚のまま、どこまでも深く墜ちていく。  一ヶ月分の禁欲という名の「利子」は、あまりにも高くついた。  ……まあ、獣の檻に自分から足を踏み入れた時点で、俺の負けなんだけどな。  さよなら、俺の安眠。  そして――明日の学校。

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