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第18.5話 誰か、俺に休みをくれえええええ!!―火曜日のガウル― ※R描写あり【新規書き下ろし】

 ランタンの灯りはとうに消え、シンと静まり返った室内に、俺とガウルの熱い呼吸だけが重なっていた。  汗ばんだ肌と肌がぴったり密着していても、不思議と不快感はない。それどころか、俺の太ももほどもあるガウルの丸太のような腕の中にすっぽりと収まっていると、半端ない安心感に包まれる。 (ああ……俺、本当にガウルと致しちゃったんだ……)  俺はいま、ガウルの太い腕に包まれている。  そして――ガウルの『ガウル』は、まだ俺の中に包まれたままだ。  ベッドの上の惨状と、自責と歓喜でぐちゃぐちゃな腰の痛みに、俺は頭を抱えた。 『YESショタ、NOタッチ』。  それが俺の確固たる主義主張であり、魂の誓いだったはずだ。  観賞用として愛でる! 手は出さない! 法律と道徳を守る健全なショタコン! (……いや、認めるよ!? 隠れてショタ受けのエッチなBL漫画とか読んだことあるよ!? むしろ熟読してたよ!! 『小さくて可愛い攻めに翻弄されるデカ男受』とか『ショタ×ショタ』とか大好物だったよ!!)  ​だが、それとこれとは話が別だ。 (まさか読む側だった俺が、実生活で『ついこのまえまで合法ショタだったはずのガチムチ獣人×俺』で受けデビューする羽目になるとは……!!)  紙やスマホで二次元の反転アンソロをニヤニヤ読んでいた過去の自分を全力で殴り倒したい。  リアルな『受け』の腰の破壊力、舐めてた。マジで痛いし甘いし逃げられない。  今すぐ自分にヒールをかけたい。……いやでも待て、またこの前の坑道みたいに筋肉バフがかかって『エクストラヒール』になっちゃったら、全回復したガウルによる恐怖の第2ラウンドのゴングが鳴り響きかねない。  そんな惨状を想像して脳内でぐるぐると葛藤していると、 「ユーマ……」  目尻に、頬に、ガウルの熱い唇がそっと押し当てられる。  暗がりの中で、ガウルの目の水晶体だけが野性の獣のように怪しく光っていた。その熱を孕んだ眼差しに、俺のあられもない姿をすべて見晒しているのだと実感させられ、今さら猛烈な羞恥が込み上げてくる。  この異世界に転生して若干顔は西洋風にアップグレードされたものの、絶世の美少年とは程遠い。目つきは悪いし、鼻も低い。冴えない容姿のモブ顔な俺に、よくあんなに興奮できるもんだなと感心さえしてしまう。 「どうした……?」 ​ 無意識に凝視していたことに気づかれたのか、ガウルの太い指が俺の顎にそっと触れた。 「べ、別にっ……なんでも……」  ガウルは「そうか」と低く呟いて小さく笑うと、俺の唇をぺろりと湿らせるように舐めた。そしてそのまま、逃げ場を塞ぐように深く口づけられる。 「んっ……ぁ、……ん……っ、ガ、ガウル……っ」 「……なんだ?」 「あ、あのさ……いつまで、このままなわけ……?」  恥ずかしさを誤魔化すように問いかける俺の耳元に、ガウルは甘えるように「ふぅ」と熱い息を吐き出した。 「……ダメか?」 「だ、だめってわけじゃないけど……その……っ」  俺の尻の中にみっちりと収まっている“ガウル”の、圧倒的な存在感と熱気が尋常じゃない。 「……悪い。一度こうなると、しばらくは抜けないみたいだ」 「……へ???」  俺の頭の中はハテナマークでいっぱいだった。 (しばらく抜けないってどういうことだよ……?) 「……引っかかってる」 「ひっかかってる……??」 「……ほら」  ガウルがわずかに腰を浮かせた瞬間、それに引っ張られるように俺の下腹部まで「ぐっ」と持ち上げられた。繋がった部分からダイレクトに伝わる異物感と熱に、背筋がゾクリと震える。 「う……そ……なにこれ、マジで抜けない……!?」 「……そういう仕様だ」 「仕様ってなんだよ!? これ、いつ抜けるんだよ……!?」 「……早くて三十分。長ければ……一時間くらいだ」 「い、一時間……!?!?」  一時間この体位で連結したまま動くなと!?  呆然とする俺の胸元に、ガウルは「すまん」と申し訳なさそうに、けれど絶対に離す気のない強固な腕力で顔をうずめてきた。  出すものを出してすっかり賢者モードに入りかけた俺の体とは対照的に、ガウルは未だに熱い吐息を繰り返していた。 「っ……ふ、……ユーマ……っ」  ​抱きしめる腕にぎゅうっと力がこもり、ガウルの身体が微かに震えている。繋がったままのそこから、ガウルの脈打つ熱がダイレクトに伝わってきて——……待て。 (……これ、ガウルまだ一人で余韻に浸って悶えてんのか……!?)  まるで他人の自慰を特等席で見せられているような、妙に気恥ずかしい緊張感が押し寄せてくる。連結されたまま動くこともできず、ただカチコチに固まっていると、突然、俺の尻の中でガウルが『ビクッ』と大きく脈打った。 「あ……っ!?」  ダイレクトに奥を跳ね上げられ、驚いた俺の身体が反射的にキュッと奥を締め付けてしまう。 「っ……!」 「あ、ご、ごめ——っ!?」  ガウルが苦しそうに、けれど甘く悶えて俺を強く抱きしめ直す。  その瞬間、繋がった部分がさらに『ギチッ』と圧迫感を増した。……待て、これ絶対さっきより密着度増して固くなってないか……!? (ひいぃぃ……! ガウルのガウルよ、頼むから早く鎮まりたまえ……ッ!!」  俺は心の中で祈祷師よろしく、神主が振る白い紙のヒラヒラをバサバサと振り回しながら、至近距離でガウルの艶めかしい吐息を浴び続けるしかなかった。    *** 「……ん……っ」  部屋の明るさに、ぼんやりと意識が覚醒し始めていた。  ガウルはまだ俺を抱きしめたままらしい。肌越しに、弾力のある太い腕の感触が伝わってくる。  ​髪を梳くように、そっと優しく撫でられる。その心地よさにうっとりしながら、俺は薄く目を開けた。 (あれ……? ガウルって、こんなに日焼けしてたっけ……?)  ぼんやりとした頭でそんなことを考えていると、不意に背中側からするりと伸びた手が、俺の胸元に回され——。 (ちょっと待て。なんか手が多いんだが……!?) 「おはよ♡ ユーマ♡♡」 「……っっ!?!?!?」  視界いっぱいに広がっていたのは、クーの満面の笑顔だった。そして—— 「よく眠れましたか? それとも“夜更かし”されちゃいました……?」  背後から耳元にふぅっと息を吹きかけるようなアヴィの声に、寝ぼけきっていた俺の頭は、その瞬間――一気に限界突破の覚醒を果たした。 「うわああぁっ!?」  そこには、まるで子供の添い寝に付き合う体勢のアヴィと、「ユーマおはよ〜♡」と呑気に手を振るクー。  いつの間にか帰ってきてた二人に両サイドから抱き枕状態にされ、しかも自分がまともな服すら着ていないことに気づいた俺は、「ひッ!?」と血の気を引かせて勢いよく跳ね起き――  ――ごきっッッ!!!! (いっ……てええぇぇぇぇぇっ!!??)  ​腰を突き抜けた激痛と、体の奥に残る鈍い熱に、俺は声もなく崩れ落ちかけた。 「ユーマ大丈夫!? ガウルに無茶されたんじゃない?」 「かわいそうに。ガウルさんがしつこかったんですね」 ​「えっ、あっ、おまっ……!?」  ——そうだった。  そもそもこいつらガウルとグルだったんじゃねぇか……!!!  っていうことは、ガウルとあんなことやこんなことしたこと、全部バレてるってことじゃねぇか——!! ​  寝室の明け放たれたままのドアから、台所に立つガウルの姿が見えた。ガウルは何事もなかったかのような澄ました顔で振り返り、「朝メシできてるぞ」と一言だけ告げて、また黙々と作業に戻った。 「ガウルすっごく機嫌いいね♡」 (え、あ、あれで……?) 「ご主人様の“初めて”を全部自分のものにできて、さぞ満足したんでしょうね」 「いいな〜、オレもユーマの“初めて”欲しかったなぁ」 「大丈夫ですよ。“初めて”なんていくらでも作ればいいんですから。……ねえご主人様?」 「お、おま、おまえら……」  腰の痛みと、羞恥と、貞操の危機に、パクパクと酸欠の金魚のように青ざめる俺に、ニコニコと距離を詰めてくるクーと、退路を断つように背後に回り込むアヴィ。  なんだこの囲い込み漁……!!  俺は魚か!? 初物か!? 旬の戻りガツオか!?  脂がのっててうまそうだな!?  ーーって、違うわボケェッッ!! 「“初めて”は1回しかないから“初めて”って言うんだよ!! 概念を勝手に捏造すんな————!!!!」  いろんな意味で突っ込まれる危機に瀕しつつ、突っ込む俺。  朝ごはんのいい匂いが漂う平和(?)な我が家で、俺の腰と貞操だけがまったく平和じゃない二次災害のカウントダウンを迎えていた。  だが、とりあえず今は、腰にヒールをさせてくれ。

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