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第33話※
「風呂に入ってもいい?」
互いの唇を存分に味わい、そのままベッドへ倒れ込んで、リュートがラブのシャツのボタンに手をかけた時、突然お申し出があった。
「えっと……い、今から?」
リュートが戸惑いながら尋ねる。ラブはこくんと頷いた。
「なんか、僕、汚い気がして……」
「全然。いい匂いがする」
リュートはラブの首筋に顔をうずめ、思いきり空気を吸い込む。ほぼ無臭に近いが、少しだけ甘い匂いがした。それでもラブは、不安な顔をしながら食い下がる。
「でも、身体傷だらけで汚いし、先輩嫌にならないかな?やっぱり一回洗った方が……」
リュートは、ラブが何に不安を抱いているかを理解した。
「汚いわけないだろ?」
「それに、なんか頭がふわふわするんだ……冷水かぶって引き締めてくる」
ベッドから起き上がり、どうしてもバスルームに行こうとするラブを急いで止めた。
「引き締めなくていいからっ。風邪ひくし……背中、見せてみ?」
リュートの言葉に素直に従い、シャツを脱いで背中を見せる。肩甲骨の上のガーゼも取れ、大分
治ってきてはいるが、まだ痛々しい傷がラブの背中を覆っていた。
「ほら、汚いでしょ?うひゃあっ!」
リュートは、ラブの傷の一つにキスを落とす。
「きれいだよ」
わざと音を立てて、上から順番に傷を吸う。ラブは、リュートの唇か離れるたびに、微かに身体を震わせた。
「んっ……くすぐったい」
腰の方にあった最後の一つに口づけし、ラブの肌を晒しながら、更に下へと進んでいく。
「やっ……せん、ぱい?」
「嫌だったら、言って」
リュートはラブをベッドにうつ伏せに寝かせて、太ももの傷に唇で触れる。ラブは、上半身の時とは明らかに違う反応を見せた。
「あっ……んんっ」
リュートは夢中で、すべての傷に上書きするつもりでキスをした。それが終わるころには、ラブの身体が熱を帯び、反応を示していた。
「はっ……はぁ……リュート先輩、こっちも……触って?」
つい口走ってしまったおねだりに、自分が何を言ったのか後から理解がついて来て、ラブの身体が赤くなっていく。ラブが悟られないように両手で顔を覆う。
「ラブちゃんよ……可愛すぎるから、やめてくれー」
リュートはラブの背中にのしかかり、抱きしめる。「お、重いー!」と足をばたつかせるラブだったが、内心、羞恥から解放されて安堵していた。
「……今回こそ、ラブを気持ちよくさせるよ、俺は」
ラブを横向きに寝かせ、身体を密着させる。後ろから手を伸ばしてラブの主張し始めた屹立に触れると、少し硬くなって切なそうに震えていた。自分が与えた刺激をちゃんと受け取ってくれて、リュートは嬉しくなった。片手で包み込んでゆっくりと上下にしごく。
「あっ……あ、ん、んぅ……」
空いた方の手で足の付け根辺りをさすると、甘い声を漏らしながら「びくん」と身体を震わせる。その反応が面白くも嬉しくもあり、リュートはしつこいくらいに撫で上げてやった。昂ぶりをしごく速さを徐々に上げていくと、それを追いかけるように、ラブの呼吸も早くなる。しばらく続けると、自分の手をリュートの手に重ね、限界を訴える。
「んっ、せんぱ、い……いっちゃう」
「いいよ。集中して」
手を上下に動かすスピードはそのままに、頭を優しく撫でてやると、ラブの全身が一瞬強張り、リュートの手の中に射精した。
「はっ、はぁ、はっ……んっ……」
ラブが余韻に浸れるように、しばらく背中を撫でて見守る。呼吸が落ち着いてきたところで、ラブに痛いところを突かれた。
「……当たってるよ」
「……当ててんのよ」
今度はリュートが赤面する。くすくす笑いながらラブが反転し、リュートに向き合う。手には、「ぬるぬるくん」が握られていた。「いつのまに!?」と本気で驚くリュートに「用意周到なもので」と返す。
「せっかくだけどラブ、それに頼らず俺に任せて欲しいな、なんて……」
「いえ、恥ずかしいからいいです」
「いやいや、それもひっくるめて、愛が深まるというか……」
「面倒くさいし時間かかるからはやくつけて。それに……」
2往復問答した後、「ぬるぬるくん」をリュートの胸に押し付けながら、視線をそらしてラブが言う。
「あ、愛ならもう、十分深いよ」
「……ラブ、もっかいぐはっ!」
ラブの顔を覗き込むリュートの鳩尾に、拳が命中した。
入口を「ぬるぬるくん」で十分に濡らし、挿入する。ラブが息を吐くと、それに合わせて繋がりが深くなっていく。
「ふっ……ううっ……あっ……きもちい……」
顔を見ると、瞳が潤んで頬が上気し、確かに気持ちよさそうだ。リュートは上体を倒してラブにキスをする。
「んっ、んっ……んぅ」
キスをする度にラブの中がきゅっと締まり、リュートも快楽に飲まれていく。
「なんか……僕、すごい緊張してる。先輩は余裕だね」
「は?どこ見て言ってんだ、心臓がはちきれそうだ」
ラブを抱き起し、挿入したまま膝に座らせる。座ることにより、リュートのそれが一番奥に当たってラブが一段高い声をあげた。
「ああっ!……はぁ……はっ、もう!」
「聞いてみ?」
リュートは、ラブの頭を押さえて自分の胸に押し当てる。ラブはというと、動きたいように勝手に動くリュートに、ご機嫌を斜めにしながらも、鼓動に耳をすませた。
「……ホントだ。効果あるんだ」
「なっ……お前、また」
「違います!マーケットで買った、ちょっとエッチな気分になる薬を少々」
「何だそうか……いや同じだ!」
ケタケタ笑うラブだったが、リュートが突き上げたため、嬌声をあげる。
「あっ、あ、んっ……」
「ラブ、一回逃げ出した俺を受け入れてくれてありがとう」
ラブの背中を撫でながら、リュートはありったけの感謝をこめてラブに伝える。
「僕も。ずっと好きでいてくれて、ありがとう」
ラブは、リュートの頬に手を添えて、軽く口づけをする。「いい?」とラブに同意を求め、頷くのを合図に腰を揺らす。
「あ、あ、っあ」
5年の隙間を埋めるかのように、お互いを肌で感じ合う。浅い呼吸で、次第に余裕をなくしていくリュートに、ラブは優越感を覚えた。「きもちい……ですか?」答えが分かっていてそれを聞く。
「気持ちいいし、幸せだ」
リュートは笑顔で答える。額には汗が煌めいて、とてもきれいだ、とラブは思った。
「ラブ……もっと激しくして、いい?」
リュートが堪えきれない様子でラブに尋ねる。ラブはリュートを抱きしめて、「先輩の好きにしていいよ」と小声で耳打ちする。
リュートはラブをベッドに押し倒し、ギリギリ理性を保ちながら、欲望のままに腰を打ち付ける。急に高まった快感に、ラブも上り詰めていく。
「あっ!ああっ、ふあっ、……また、いっ……」
「くっ……俺、もっ……」
「二度と離さない」それを体現したかのように、しっかりと抱きしめ合う。お互いの気持ちが混ざり合い、その幸福感に包まれたまま、同時に達した。
「……ラブ、愛している。ずっと一緒に居てくれ」
ラブの目から、次々と大粒の涙が零れる。他人から愛を受け取るという事が、何だか怖くて、けれどそれ以上に幸せで、こんなにも色々な感情が渦巻くものだとは思ってもみなかった。「僕はこれを待ち望んでいた」ラブは、完璧な答えに辿りつく。
「……うん」
その後は、何も語らず、ただキスをして、手を繋いで、何度も見つめ合いながら眠りに就いた。
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