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8-1 ※

ガチャガチャ……カチャ……。 「……あれ、開かない……」 震える指先で鍵を回すけど、うまく噛み合わない。 背中を伝う汗が気になって、余計に焦ってしまう。 「お、お待たせ……!」 ようやくドアが開き、俺はわざとらしく声を張って優成を振り返った。 「と、とりあえず……ビールでいいか?」 自分でもわかるくらい、声が裏返っていた。 優成は何も言わずに中へ入り、俺も靴を脱いだ瞬間── ──ガシッ。 「うわっ……!」 腕を掴まれて、次の瞬間には背中が壁に叩きつけられていた。 驚く暇もなく、優成の唇が激しくぶつかってくる。 「んっ……!?……んむ……!」 荒々しいはずなのに、熱に浮かされたみたいで、逃げられなかった。 ──チュックチュ……ジュパッ…… 「今日の世利……格好良かったのもあるけど」 唇を離した優成が、息を荒くしながら低く囁く。 「それ以上に可愛くて……ずっと我慢してた」 俺は、優成の切なそうな瞳を見つめ返した。 「……キスだけでいいから、許して」 そう言って、再び激しいキスが降ってきた。 唇を何度も貪られて、呼吸なんてできやしない。 「んぐっ……っ……あふっ……」 壁に押し付けられたまま、逃げ場のない唇を何度も奪われる。 いつの間にか口を開かされて、舌をねじ込まれた。 分厚い優成の舌が、ヌメヌメと俺の口内を刺激する。 頭がクラクラして、立っていられなくなった俺は、必死に優成の腕を掴んでいた。 そんな状況の中、俺の脳内はお祭り騒ぎだった。 ……こ、このシチュエーションは、『玄関セックス』の始まり! ドラマ、少女漫画、AVなどの数多のフィクション作品で取り入れられてきたエッチシーン! まさか自分の童貞人生で体験する日が来るなんて!!! ……でも、現実は想像より100倍激しいぃぃ!! ──ジュルッ……ジュパッ……チュッ…… 「んっ……うっ……はんっ……」 舌が口内を暴れるたびに、お互いの息が絡み合う。 俺は、顎からどちらのものかわからない唾液を垂らし、必死に優成のキスに答えていた。 優成の舌が俺の上顎をベロッと舐めた瞬間、背筋にゾワッと快感が走り抜けた。 足に力が入らなくなった俺は、そのまま膝から崩れ落ち尻餅をついた。 「っ!……痛っ……」 「世利、ごめん……ハァハァ、やりすぎた」 俺はキョトンと目を丸くして優成を見上げた。 影になっている優成の顔から流れる汗が、妙に色っぽく見えた。 「え、終わり?」 つい、溢れた言葉だった。 さっきまで『玄関セックス』の妄想をしていたせいで、勝手にこの先も何かあるような気になっていた。 俺の言葉を聞いた優成は、目に黒い光を宿し見下ろしてきた。 「お前……それ、本気で言ってんの? 俺らまだ、付き合ってないぞ?」 声は優しいはずなのに、その真剣な言葉に俺は体をブルっと震わせた。 「ご、ごめん。深い意味はなくて……」 「軽い気持ちでやってた?」 「違う!そんなわけ、ない……。 優成だからできるんだよ……」 「っ…………」 俺の言葉に優成の動きが一瞬止まった気がした。 恐る恐る優成の顔を見上げると、困ったように眉が下がっていた。 「じゃあ、世利が大丈夫だと思うことだけやってもいい?」 優成の指先が俺の頬をなで、ゆっくりと下に下がっていく。 「……大丈夫だと、思うこと?」 優成の指先が俺の首筋をなぞるように下りていく。 俺の体が勝手にビクビクと反応する。 「うん。嫌なら嫌って言えよ?」 優成はそう言うと、座り込む俺の首筋に唇を這わせてきた。

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