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第31話 ほとぼり

スマホのカレンダーを開いて頷く。どうしたのかと見つめ返すと、幸耶はしたり顔で人差し指を立てた。 「やった。じゃ、また夏らしいことして遊ぼう」 夏らしいこと。 弾んだ声で笑う彼に頷きつつ、頭上にはハテナが浮かんでいた。 遊ぶのは大好きだから、断る理由はない。幸耶がいるなら尚さら。 翌日の夜。自宅から離れた駅に降り、幸耶に案内してもらったのは町内会が開催してる盆踊り大会だった。 たくさんの鮮やかな提灯が行き先を教えてくれる。たくさんの人の笑い声が響いている。 盆踊りが主体だけど、俺達の目当てはやっぱり屋台。これこそお祭り感があって、テンションは爆上がりだ。 「規模は小さいけど、色々あるし楽しめそうだろ?」 「うん! うわ~、美味そうな匂い……もう食べもん全部制覇したい!」 「あはは。ひとつずつ見ていこうな」 ここは幸耶の地元らしい。小さい時によく訪れていたが、お祭りに来たのは数年ぶりだと言っていた。 「家族で来たこともある」 幸耶は金魚すくいをしてる子ども達を眺め、ふぅと息をこぼした。 「無条件で楽しい気持ちになれる場所って良いよな。俺にとっては、夏祭りがそう」 「そっか……」 控えめに微笑む幸耶の横顔は寂しそうで、切ない気持ちになった。 彼にとってここは、家族の思い出が蘇る特別な場所なんだ。 なら、その思い出も守ってあげたい。幸耶がもっと、幸せな気持ちを思い出せるように。 「俺でよければ、何度でも付き合うよ。来年も、再来年も」 花火の時と同じように、小指を出して約束する。幸耶は頬を赤らめ、照れくさそうに小指を出した。 陽気な祭囃子。子ども達の笑い声。食べ物を焼く音。 ただここにいるだけで、本当に楽しい。日本人に生まれて良かったと思える、夏の代表格かもしれない。 「焼きとうもろこしに、いか焼き、かき氷と……あっ、あと綿あめも食べよう!」 「わかったわかった。転ぶなよ」 お祭りでは胃袋がいつもの倍に伸びる気がする。結構食べてるのに、新しいものを見つけると飛びついてしまった。 「そういや、俺が昔住んでたとこは学校の運動会に必ず的屋さんが来たんだよね。だから運動会って、たこ焼きや焼きそばが食べられるイベントだと思ってた」 東京は違うんだなー、と言って綿あめを頬張る。 「それ、多分お前のいた地域が特殊なんだと思うぞ。運動会って、親が弁当作って持ってくるもんだから」 「そうか。色んなもん食べられて良かったんだけどな」 りんご飴も買い、幸耶に手渡す。すると口元を指でなぞられた。 「ソースついてる」 「ふあ、さんきゅ」 「ソース味のりんご飴になるぞ」 「それはやだなぁ……」

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