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第4話
「じゃ、帰るか」
「コタ、車も出してくれてありがとう。
助かる」
「うむ。
苦しゅうない。
もっと崇めたまえ」
ゴトゴトと凹凸のある道をキャリーバッグと引っ張りながら歩く。
建設当初は綺麗でも、次第にタイルが割れたり沈んだりしていった駅前の歩道。
つい先程まで生活していた都会とは違う。
手入れが行き届いていないこの感じ。
それがとても懐かしい。
「あ、車こっち。
荷物適当に乗せて良いから。
汚れたら鷹矢が掃除してくれるだろ」
「そりゃ勿論。
つうか、こういう時の為にタイヤ用のカバーあるから汚さねぇよ」
こういう小さいことが営業に生かされる。
ドヤッ、とタイヤ用のカバーを手持ちの鞄から取り出すと、用意が良いなと琥太郎は笑った。
眉を下げて、幼い頃とまったくかわってない笑い方。
そんなことに心がゆらゆらと動くようだ。
「お願いしまーす」
更には、乗り込んだ車内は琥太郎のにおいでいっぱいだった。
シートベルトへと手を回し、まずいことに気が付く。
思春期の授業中の気まずさを思いだし、そっと膝の上で鞄を抱える。
これは、幼馴染みの前でも恥ずかしい。
いや、幼馴染みの前だからこそ恥ずかしい。
「コタ。
窓、開けて良い?
寒い?」
「良いよ。
俺は、平気。
え、くさい?」
「ちげぇよ。
少し風に当たりたいだけ。
開けさせてもらうわ」
「こっちも、動かすわ。
行くぞ」
久し振りの地元の空気に髪がを揺らした。
都会の空気に慣れ、すっかり思い出せなくなっていた冷えた空気。
背伸びをしない町だ。
下半身の違和感はきっとすぐに落ち着く。
親友に会って、心だけでなく身体まで学生に戻ったつもりなのか。
それは流石に図々し過ぎるだろ。
いくつだと思ってるんだ。
「そういや、瑠璃子さん元気?
土産、口に合うかな」
「姉さんが元気じゃなかったことないでしょ…。
シングルになって、実家に帰ってきてからは帰りにくくて。
なんで姉さんって、権力の塊なんだろう…。
甥っ子は可愛いけど、中々足が向かわないよ…」
「瑠奈ちゃんにはあっちで会ってたけど、瑠璃子さんとは…9年ぶり?
甥っ子いくつになったんだっけ?」
「4歳。
もう怪獣だよ。
多分、鷹矢のこと好きだと思う」
4歳。
保育園で、俺と琥太郎が既に仲良しだった頃。
琥太郎とは記憶にない頃からずっと友達だ。
毎日飽きずに砂場で山を作っては、トンネル開通に汗水垂らしていた。
トンネルから水を流したり、木に登って降りられなくなって泣いたり。
大人になった今より、ずっと夢中で、慌ただしくて、退屈なんてしなかった。
すごく前の話。
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