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第7話

「るなもしってる?」 「瑠奈ちゃんも知ってるよ。 ママの妹だね」 にこーっ、と笑うと手を引っ張った。 どうやら、自分の好きな人達を知っている=悪い人ではない、と成立したみたいだ。 このご時世、少し不安になる方程式だが……。 「たかや、あそぼっ」 「おん。 なにする?」 「ゲーム! ママ、いーい?」 「鷹矢くんが良いよって言ったら良いよ」 手を引かれ、リビングに入ると子供の写真が増えていた。 琥太郎や瑠璃子さん、瑠奈ちゃん、真新しいのは碧くんの写真。 小さい頃からこうして並んでいたが、それが随分と増えている。 家族から愛されているのが一目で分かるそこのコーナーが小さな頃から好きだった。 「たかや、ゲームできる?」 「おん。 出来る出来る」 「これ、たかやにかす」 コントローラーを手渡すと、隣にちょこんと正座する碧くん。 なんだか胡座をかいている自分が恥ずかしくなり、同じく背筋を正す。 「鷹矢、コーヒー甘く……なんで正座してんの? 崩しなよ」 眉を下げてクスクスと笑われてしまった。 「いや、碧くんが正座してるし…」 「碧は時代劇好きだから真似してるだけ。 気にしなくて良いよ。 他の人には強制しないから」 「うーん…」 「真面目だね」 子供の前だからか、ふんわりした空気感が気持ちを揺らす。 家族じゃない。 なのに、家族みたいな距離感で。 だけど、家族にはなれない距離で。 なにも掴むことの出来ない手でコントローラーを握り直した。 なんだろう。 なんか、飲み込めないナニかが喉元にあるみたいな感覚がする。 飲み込みたいのに大きすぎて飲み込めない。 ゲームを一頻り楽しみ、お土産をおやつに食べ、碧の興味は時代劇へと移った。 時代的には当たり前なのに、なぜかサブスクリプションで時代劇まで観れるとは思わなかった。 お決まりの展開でも、アツい。 胡座の間に座り、腹をせもたれ代わりにして、時代劇を観ている碧くんが目を擦りはじめた。 手のひらで目を擦る琥太郎と同じ癖をしている。 「眠い? 昼寝の時間か?」 「ちがう…。 たかやといる」 「俺達、そろそろ帰るから寝な。 また遊ぼう」 「ん…、やくそく…」 小さな、小さな指にそれを絡ませた。

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