17 / 111
第14話
トンカツに千切りキャベツ、季節の野菜の胡麻和え。
あたためただけ、買っただけ、ラップを剥がしただけ。
琥太郎はそう言うが、有り難いことにはかわりはしない。
米も炊きたて、味噌汁も熱々。
飯は心のバロメーターでもあり、栄養だ。
しかも、幼馴染みが用意してくれたんだ。
こんな感謝すべきことはない。
「鷹矢の箸とかも適当に買ったけど、使う?」
「マジ?
使うっ。
わざわざ買ってくれたんだ」
「割り箸ってのも味気ないだろ。
新居に持っていっても良いし」
この気遣い。
そういうところに惹かれたのか。
やっぱり、嬉しいと思ってしまう。
ご飯のよそわれた茶碗を受け取ってテーブルに運ぶ。
その途中で、なにかが気に掛かった。
茶碗…、2個ある
もしかして
「茶碗も?」
「うん。
っても、100均だけどな。
けど、100均の皿って割れにくくて便利だよな」
「分かる。
割れても気にしねぇなぁって買った皿なのに、割れた試しがないな。
あと、パン祭りの皿。
ありゃ強い。
ある皿で良かったのに。
でも、ありがとう」
一瞬、琥太郎の目が揺れた。
気のせいかと思うほどの揺れが一瞬。
立ち眩みや眩暈だろうか。
「どうか、したか…?」
「え?
なにが?」
仕事柄人の顔はよく見ているつもりだ。
とはいえ、医療従事者ではない。
気のせいと言われればそうなのだろう。
久し振りに新規の顔を頭に叩き込んだので、頭が疲れているのも知れない。
もう一度マジマジと顔を見てもなんともないかおをしている。
「いや、なんでもない。
俺の気のせいだ」
「期間限定でも同居人だからな。
皿くらい用意するって」
「じゃあ、洗い物は俺がする」
「助かる」
飯を食って、今日の身体を労り、明日への労力を賄わなくては。
「それと、これは姉さんから。
かぼちゃの煮物」
「お、瑠璃子さんの手作り?」
「そう。
人が作ったの平気だったら食べて、だって」
送別会でワイワイ飲んだり食べたりするのも楽しかったが、気兼ねない友人との食事も格別だ。
まして、気心知れた親友となら。
ともだちにシェアしよう!

