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第17話
「まずは、うちの製品について勉強しましょうか。
農業にどう生かすのか、なにが強みか、自分の言葉で喋れるようになるのは大切ですからね。
それとマニュアルも読んでください。
これは必ずお願いします。
考え方のベースを合わせることは大切になりますから」
「はい」
「吉野さんは、ドローンに触るのははじめてですか?」
「はい」
「格好良いですよね」
興味があり、おもちゃとして買えるようになっても、いざ買うかとなれば話は別だ。
値段に似合うだけ遊ぶのか。
使いこなせるのか。
法律だって制定されている。
その中で手を出すか。
まず、大きな一歩がそこだ。
そもそもドローンの区分とはなんのか。
おもちゃ。
農作業用品。
撮影器材。
配達にも使うから配送車なのか。
そんな不思議な機械だ。
「このドローンの利点はなんだと思いますか?」
「小さい…ですか?」
「うん。
小さいですね。
なぜ、小さいのが利点になりますか?」
なぜ欲しくなるのか
なぜ買いたくなるのか。
なぜ借りたくなるのか。
まずはそれを考えてもらう。
押し付けてはいけない。
決して安いものではないから。
相手から求められなければ、それはこの会社が求める営業ではないから。
押し付けはしてはいけない。
それは、誠実ではないから。
「小さいと軽くて小回りが効きます。
片付けも幅をとらないです」
「すごく良い着眼点です。
小回りが効く、つまり大雑把にならない。
これは農家さんが大切にすることの1つです。
例えば、薬剤散布をして1部だけ撒きムラがある。
これでは困りますね」
大は小を兼ねる。
確かにそうだ。
けれど、大きいのがいつも最善かと言われればそうでもない。
適したサイズが1番だが、毎日使うものなら小さい方がストレスは減る。
そういう着眼点も必要だ。
「除草剤の重さが25キロ、散布するための機械が9キロ。
30キロ以上を担いで暑い中を歩きます。
ドローンなら、担がなくて良い。
体力面がキツくて農業を辞められる方もいます。
けれど、今までしていた仕事が生き甲斐である人達もいます。
繋げられるなら、繋ぐ。
そのお手伝いをしていきましょう」
「はいっ」
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