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第18話

「あの、ドローンって飛行させるのに資格が必要ですよね」 「はい。 必須ではないですが、持っていた方が良いのは確かです。 営業先で実演なんてこともさせてもらいますから」 「講習受けにいった方が良いですか? 面接の時は、入社後で良いと言われたのですが」 なるほど。 上司からの提案に合点がいった。 もう少し細かく報連相が欲しかったが。 「今年度は農協さん主催で農家の方々とドローン講習をするのですが、希望者はその時に一緒に講習を受けることになりました。 勿論、会社から補助が出ます」 農家の方々とのコミュニケーションをとりつつ、資格もとる。 一緒に勉強をすれば、切磋琢磨、持ちつ持たれつの関係を築くことが出来る。 そして、そこで築かれた関係性は営業の中で利点になっていく。 上手い戦略だ。 こういう“仕組み”が出来るのも、農協との信頼関係があってこそだもんな 佐々木さんも良い人だし、お土産買い込んできて良かった 「難しいですか?」 「俺でもとれたので、大丈夫ですよ。 飛行訓練もコツさえ掴めば簡単です。 自主的に練習するなら、付き合いますよ」 ホッとした顔を見て、頷き返す。 誰だって最初は不安だ。 俺だってそうだった。 先を歩いた人に分からないことがあるなら、伝える。 だから、そう不安そうにしなくても大丈夫だ。 ドローンを飛行させるのは国家資格─無人航空機操縦者技能証明が必要になる。 今回のように散布ドローンであれば二等資格だ。 飛行ルールや法律などの勉強が必要にはなるが、その為の講習。 わざわざ落とすようなことはしない。 きちんと学べていれば合格率は高い。 それに、 「俺も最初は飛ばすだけなのに、回転させちゃってました。 けど、今は慣れてスイスイですよ。 今回は農家さんも一緒に勉強しますから、お互い協力しあって良い関係をつくるきっかけにもなりますしね」 「きっかけにも…」 「そうです。 会社としてはドローンを貸し出したりすることで利益を得ますが、その先は同じものを目指しています」 営業として接するのではなく、同じものを見るんだ。 お互いの死角をカバー出来るような関係になれたら、それはとても素敵な関係だから。 大手には出来ない近さや親しみやすさを強みにしていく。 「是非、色々教えてくださいっ」 「勿論です。 さ、話の続きに戻りましょうか」

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