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第45話
「琥太郎くん、お土産」
「あ、可愛いです」
「張子の虎だよ。
可愛いよね」
手渡されたのは、『がおー』と口を開けた黄色い虎の伝統工芸品。
表情は勇ましさもありつつ、どこか可愛らしい。
デフォルメされたフォルムも親しみやすく愛らしい。
食事を終えたら終わりだと思った関係は、それからも続いている。
お土産をくれたり、食事に誘ってくれたり。
人の懐に入り込む…というと悪くも聞こえてしまうが、人の隣に立つのが上手な人で、気が付けばそこにいることに違和感や警戒心はなくなった。
本当に立ち入られたくないところには入り込んでこない。
距離感の測り方がすごく繊細なんだ。
だから、嫌ではない
友達のような関係になるのに、時間はかからなかった。
親友に比べやっぱり口数は少ないが、篁さんを見ていればなにを伝えたいのか分かる。
視線の動き、指先の動き。
言葉ではなく、行動に出る人だと分かったから。
目に滲む感情。
口元に宿る気持ち。
優しくて、繊細で、それでいてそれを隠す人。
「いただいて良いんですか?」
「うん。
琥太郎くんに似てると思って買ってきたから、飾ってくれたら嬉しい。
お菓子もどうぞ」
「ありがとうございます」
「うん。やっぱり、そっくりだ」と優しく微笑む顔。
そこに愛おしさが滲んでいるように思えるのはなぜだろう。
少し優しくされたから、その気になっているのか?
同性相手に?
恥ずかしい自意識過剰も良いところだ。
恥ずかしくて、冗談でも龍雅さんには言えない。
かわりに、虎の頭をそっと指先で撫でた。
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