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第48話

何度も起きた。 そのたびに、龍雅さんは隣にいてくれた。 ずっと居てくれる。 それに安心して、何度も眠った。 何回目かの覚醒に目を擦ると、ビニールの擦れる音がした。 「コタくん、起きた? 食べれる?」 目の前に差し出された“ソレ”に目が釘付けになった。 眠気なんて忘れてしまう。 「ラーメン…」 しかも、コンビニで売っているニンニク背脂マシマシの極太麺。 がっつりニンニクの効いたパンチのあるラーメン。 「あ……、父代わりの人がニンニク食べたら風邪なんて1発だって言ってて、風邪引くと焼きニンニク食べる人で…。 俺、母親からあんまり…っていうか、結構放置されて育っててさ…」 あ…… 不器用な人だと思ったことがいくつも頭に浮かんだ。 『篁さんの由来はなんですか? とても綺麗な名前です』 『俺? なんだろう』 『勉強は好きだけど、あんまり機会に恵まれなくてね』 『親代わりの人からもらった財布だから』 性格は、その人がそうしなければ生きてこれなかった姿、なんて言葉を聞いたが、強ち嘘でもないのかもしれない。 少なくとも、龍雅さんはそうだ。 優しい人に出会えるまで、どんな風に生きていたのか。 それは、龍雅さんの繊細さや不器用さが表している。 どう生きたいか。 それを生き様で示すことは、簡単なようで実は恵まれていなければ出来ないことなのかもしれない。 きっと自分は恵まれている。 当たり前だと思っていたものの有難さは、書いて字の如く、有ることが難しいんだ。 なんで自分の本心を隠すようなことをするのか不思議だった。 だけど、今なら分かる。 その中で、一所懸命に考えて、行動にしてくれた。 それが、たまらなく嬉しい。 それと同時に、龍雅さんを愛おしいと思った。 「今は食べられないですけど、治ったら一緒に食いましょう」 「うん。 それは楽しみだ」 心の底から深く愛おしいと思ったんだ。

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