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第53話
お昼ご飯を食べたらお昼寝をする藤野さんは、午後一に会いに行っても会えない。
それなら、昼休憩の時間を挟んででも、もう少し資料を多く纏めて、分かりやすくグラフもつけたい。
分かりやすいように。
見やすいように。
パソコンに貼り付けられた付箋を見ながら、農家さん1人ひとりにあった資料を作っていく。
前に作った資料、少し見にくいって言われたから少しフォントを大きくして…こんなかな…
まだ小さいかな…
老眼って言われても…
俺はまだ違うしな……
軽トラのドアが閉まる音がして、視線だけを窓にやる。
トラックから降りた農家さんが靴についた泥を軽くはたいていた。
林さんだ
丁寧だな
なんて思いながら、資料のフォントをもう一段大きくしてみる。
龍雅さんと付き合ってから、仕事に対してもメリハリがついたような気がする。
みんな誰かの大切な人。
そんな当たり前のことを強く意識出来たことで、今まで以上に丁寧に向き合えている気がする。
龍雅さんと出会ってから、世界がやわらかくなった。
昔は気づかなかったことや、人の優しさが目に入るようになった。
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