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第62話
あ、でも、シャワー浴びようかな
農家さんを少し手伝っただけだが、軽く汗をかいた。
やっぱりシャワーを浴びたい。
汗を流すだけでもさっぱりして、気持ちも切り替わる。
折角ゆっくり出来るのならそうしようと決めた。
着替えを取り出そうとクローゼットに向かうと、
ふとベッドのシーツが剥がされていることに気が付いた。
ベランダに大きなものは干してなかったはず。
なら、洗濯中なのだろうか。
どちらにせよ、龍雅さんの心遣いが胸にじんわりと広がった。
着替えを手に部屋から出る。
すっかり定位置になった場所へと座っている龍雅さんは、早いなと思ったのか顔を上げた。
「洗濯もありがとうございます。
シーツも洗ってくださったんですか?」
「うん。
今日は天気が良いからね」
「助かります。
けど、龍雅さんもゆっくり出来る時はゆっくりしてください」
「うん。
俺がしたかっただけだよ
けど、後でコタに甘えよっかなぁ」
悪戯っぽい笑み。
それは、一緒に過ごした時間がみせてくれるもの。
小さな“特別”。
「俺で良ければ甘えてください。
けど、その前にシャワーしてきますね」
「分かった。
あ、風呂の蓋に洗剤振り掛けたから流してくれると助かる」
「はい。
それくらいお安いご用です」
ふわふわする気持ちのまま、サッとシャワーを浴びて戻ってくるとやっぱり甘い空気で出迎えてくれる。
「流してくれて、ありがとう。
あ、濡れてる。
乾かさないと、また風邪ひくよ」
「いつの話をしてるんですか…」
「んー?
去年」
そんな前のこと…と思うけど、あの日、この気持ちを自覚したからこその今日がある。
龍雅さんとの縁は本当に不思議なものだ。
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