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第67話

そもそも、なんで琥太郎の実家を訪れたかといえば、今日は碧と一緒に川で遊ぶ為だ。 川で目一杯遊んで、バーベキューをして、そして体力を削って、夜は家で花火。 今日は、これぞ夏!という遊びを目一杯するつもりだ。 「本当に助かる。 碧、すごい体力あるし…。 最近、お昼寝するとすぐに体力回復するし…。 鷹矢くんも、付き合ってくれてありがとう」 「俺も碧に会えて嬉しいから」 「俺も。 それに、こんなに大きいスイカ、琥太郎と分けても食べ切れないですし」 営業先で貰ったスイカ3個を会社へと持っていけば、「遠山くん、貰って良いよ。 みんな親戚とかから貰うこと多いし、一人暮らしだと冷蔵庫とか入らないでしょ」だと。 いや、俺も一人暮らしなんだがな。 けど、本当にいらないか同僚達に聞けば、切ってくれるなら持ち帰る、というものだった。 1つは切った。 そして、休憩時間に食い、なんとか食べきった。 それでも手元には丸ごと1個が残ったんだ。 琥太郎と一緒に食べてもまだ余るなら、いっそ皆で食べようとお土産に持ってきた。 「かわ、いくの? たのしい?」 「うん。 すっげぇ楽しい。 琥太郎と俺も、遊んだんだよ」 バーベキューの出来る渓流。 海水みたいにしょっぱくないし、砂が足についたりしないのも楽だった。 それから、近くの欄干から飛び降りる度胸試しなんかも出来て楽しかった。 琥太郎は、普通の顔して飛び込んでいたのを今でも思い出せる。 なんであんなに度胸があるのか不思議だ。 こんな穏やかそうな顔をしているのに。 「お昼はお肉焼くから、沢山遊んでお腹ペコペコにしてね。 スイカも切るから」 「やったぁ!」 「やったー!」 碧と、嬉しい!と手を上げる。 こういう嬉しい気持ちは伝えてなんぼだ。 伝えなければ伝わらない。 伝わらなければ、思っていてないのと同意味だ。 「たかや、おにくすき?」 「好きすきっ」 「やきおにぎしも?」 「おん。 焼きおにぎりも、すげぇ好き」 「くふふっ」 碧は頬を膨らませて笑った。 「こたろーも、やきおにぎしすきだよねぇ」 「うん。 好きだよ」 知ってる。 琥太郎の家ではバーベキューの時におにぎりを焼く。 それが美味しいことも、琥太郎が好きなことも。 ずっと、隣で見てきたから。 「なら、琥太郎もやったー!だろ」 「え…、やったぁ…」 「碧、見本みせてやろうぜ」 「やったぁー!」 「やったー!」 2人で琥太郎を見ながら喜んで見せると、琥太郎は堪えきれずに小さく笑った。

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