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第68話
事務局で受付を済ませるとライフジャケットを借り、遊ぶ準備だ。
流れる水の近くは涼しい気がする。
涼しい風が吹き抜けている。
さわさわと揺れ木の葉の音も涼やかだ。
虫除けもバッチリ吹き掛けてきたし、日焼け止めも塗った。
重いスイカも持ってきた。
あとは沢山遊んで腹を空かせるだけだ。
「ここら辺で良い?」
「うん。
琥太郎、テント張れる?」
「え…、俺がするの…?
姉さんのテントじゃ…」
「か弱い姉にさせるの?」
「か弱い…」
「は?」
早速いつものがはじまった。
本当、この仲の良さには入り込めない。
だって、瑠璃子さんにとっては俺も弟扱いだから。
嬉しいけどな。
「コタ、一緒に設営しようぜ」
「助かる…」
「碧、琥太郎と鷹矢くん応援しよっか」
「かんばれぇー」
荷物を下ろし、そこからテントを取り出し琥太郎と2人で設置していく。
サクッと組み立てて、碧の着替えスペースをつくってやらないと。
遊びたくてウズウズしている顔がじっと此方を見てくる。
「鷹矢、これそっち?」
「ん?
あ、こっちだ。
さんきゅ」
組み立てながら、横目で見ても琥太郎はかわらない。
そりゃ、俺達がいるところで取り乱したりしねぇか…
碧もいるし…
「鷹矢、サボるなよ」
「うぃーす」
「たかや、おへんじちがうよ」
「はぁーい」
チャカしながらも手は止めない。
ドローン操縦と同じだ。
手は動かしながら、別の回路で頭を動かしながら会話する。
特に操縦を教える場合は手を動かしながらこうして…と説明するのではなく、どう動かすのかを口にした方が理解してもらいやすい。
こんなところでも仕事が生きるなんて思いもしなかった。
そうこうしながらもテントが出来上がると、早々に碧が入っていく。
「碧、ちんちん出さないよ」
「はぁーい。
たかや、ちんちんある?」
「あるよ。
けど、そういう話は小さい声で言おうな」
「なんでぇ」
「風邪ひくから」
サンダルのマジックテープまでしっかり確認してもらい、水着に着替えた蒼はにこにことしながら、テントから出てきた。
自分達の頃とは違い上半身も隠しているのが今っぽい。
水着も格好良いなと褒めると満足そうに手を握ってきた。
「あーそーぼ」
「おん。
遊ぼうか」
反対の手を琥太郎に伸ばす。
「こたろーも、あーそーぼ」
「うん。
遊ぼう」
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