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第95話
どこだよ、コタ…
他の自動車や歩行者に気を払いながらの運転はそれだけで疲れる。
そこに琥太郎の痕跡を探すとなると目も肩も力が入ってしまい、そこから頭へと痛みにも似た重みが伝わってくる。
それでも、琥太郎の抱えているものに比べたらなんてことはない。
だって、大切な人と離ればなれになってしまう絶望や痛みは誰にも治せないんだから。
赤信号で停止する都度、辺りをキョロキョロと見回す。
それでも、見慣れた姿は見当たらない。
人の多いところは行かねぇと思ったけど、ハズレたか…
いや、コタだぞ…
道を変え、より海の近くを走行する。
“最悪”を考えたら人の少ないところの方が都合が良い。
自分の頭の中にその考えが浮かんだ瞬間、唇をキツく噛んだ。
そんなことを想像してしまった自分が嫌だ。
だけど、琥太郎の性格から考えても1人になりたがる。
大きく外れているとは思えない。
視界の端に映る海を絶えず意識しながらハンドルを握る。
波に削られた海岸線には、ちらほらと人影が見えた。
動きから釣り人だろうか。
そちらが気になって運転に集中出来ない。
くっそ…
どこにいるのか。
どこにいったのか。
無事なのか。
…1人きりで泣いているのか。
世の中は残酷だ。
優しい人ほど傷付く。
まっすぐ前を見据えていると海面がキラッと光った。
曇り空のはずなのに、なにが光ったんだろうか。
不意に意識が逸れた。
…っ!
コタの車だ
見慣れた車体に速度を緩めると、確かにナンバープレートには見慣れた数字が並んでいる。
まるで呼ばれたみたいに、見付けることが出来た。
ここへと案内してくれたのが、“あの人”ならお礼を言う。
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