110 / 111
第100話
先を歩く琥太郎は、元気だ。
ただ、それだけを願っていたはずなのに、俺達の関係は少しだけかたちをかえた。
俺達、“3人”の。
「そういや、あっちに商業施設出来んだって?」
「そうそう。
あの辺り大学とか出来たから、人を分散させてぇんだろ」
「ポップコーン食う?」
「おん」
「甘いの?
しょっぱいの?」
そんなの決まってる。
「「両方」」
小さい頃からそうやって半分こしながら食べてきた。
笑い合えば、世界中がしあわせであるような錯覚に陥る。
それでも、琥太郎が大切な人を失った事実は変わらない。
いくら笑える時間が増えようと、心の底からの救済なんて出来ないんだ。
それでも、今はこわくない。
一緒に悩めるから。
一緒に考えられるから。
生きている人間にしか出来ない惨いことを、何度も何度も繰り返す。
何度だって繰り返せる。
「飲み物はコーラなっ」
「俺はなんにようかな。
久しぶりにメロンソーダも良いな」
「俺の奢りっつったら?」
「ビール」
「ははっ、良いよ。
飲めよ」
「やっぱ、チュロスが良い」
「うん。
食おう」
隣にいる琥太郎が笑っている。
それだけで、俺には十分すぎる未来だった。
──色んな表情が見られて嬉しいのは、琥太郎には内緒だ。
ともだちにシェアしよう!

