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第23話 君がつらいと僕もつらい
褒章式は午後から。帝国に貢献した何名かの授章者が招かれていた。今回は主に紛争関係の物だった。
ルブラ連合帝国は全体的に平和だったが、連合前の小国時代の境目に残る紛争や、一部に内戦の名残がある。グルーディアス領もそういった紛争に関係した授章だった。それぞれの授章者に讃えるための褒章、人によっては叙勲(勲章)、褒賞としての目録などを授け渡された。
授章者は横一列に並び、名前を呼ばれた者から前に出る。授賞者の関係者はその後ろに座っていた。マリローズは腰を痛めた爺(摂政)の代わりに、澄ました顔をして受賞者に渡す勲章や目録をアルノーに運ぶ助手役を買って出ていた。
最後の褒章となったシモン・ドラクールとルネ・ブランシュに全ての品を授け渡し、アルノーは付け加えた。
「一つ、伝えることがある。この度、我が妹マリローズはグルーディアス領領主シモン・ドラクールに降嫁することとなった。これは、褒賞の意味もあるが、グルーディアス領領主とマリローズと私の母の実家であるバリュティス領領主の決め事でもある。異論のあるものは申し出よ」
一瞬の静寂の後、拍手と共に祝いの声が上がった。
「では、まずは婚約。二年後、マリローズが十八になれば婚姻とする。祝福を感謝する」
澄ましたままのマリローズがシモン・ドラクールと目線を合わせるとにっこりしたので、会場は一層の拍手に包まれた。
顔を見なくてもわかる。ルネの気持ちが。おそらくは、先日のマリローズのお披露目で最初にルネに会って気持ちを知った時のアルノーの様に、渦巻く想いに飲み込まれそうになっている。君がつらいと僕もつらい。ルネと共にいられなくとも、君には幸せになって欲しいのに。
思わず、アルノーの目から涙が溢れた。君には僕の様につらい思いをして欲しくないのに。
周りは皆、可愛い妹を思って泣いたと思ったらしい。
晩餐会までの二時間ほど授章者たちはそれぞれの控室で待機である。シモン・ドラクールと同じ控室を使うルネのことを思うとつらい。
晩餐会が始まった。先ほどの受賞式とは変わって、皆カラフルな正装に着替えていた。
マリローズはシモン・ドラクールとルネの間に座っていた。マリローズのイブニングドレスは紺色。シモン・ドラクールの燕尾服の中のベストと揃いだった。ハニーブロンドの髪に付けた透明な宝石がまるで銀河の星のよう。ずっとシモン・ドラクールと楽しそうに話していた。
あぁ、胸が潰れそうだ。ルネ。
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