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第37話 姉さんたちの教え. ※
初めての砂漠越えなのでね
ルネは葛藤していた。今夜無理をさせられない。ラクダに乗る時間が長い、どうしても腰やお尻に負担がかかるから。でもこんなに触りごごちよくなっちゃったら、我慢できるわけない。
アルノーの履いてるこのパンツのスリット、なんでこんな上まで開いてんの?横から下着が丸見えなんだけど。え?なにこの紐の下着。これ、どうやって収まってんの?と言う疑問を解消する為に、脱がすしか無く、仕方なく……。
最後はお互いの負担軽減の為に、二人の中心を合わせてルネの大きな手で。その前にルネの縫い目に見える部分をアルノーが舌先で可愛がったので……
「サミーラに聞いたな」
「ふふふん、あと他の三人にも聞いた。先輩達から必殺技伝授ってすごくない?」
仕事なら同僚にも教えないそれぞれのポイントをアルノーには教えたんだな。
「◯姉妹だからね」
皇帝が言う言葉じゃないでしょ。俺と付き合って、下品になったって言われるじゃん。
出発は午後、少し日が傾いてから。日中の移動は、人にもラクダにも辛いから。
昨夜、アルノーを待ってる間に件の遊牧民の一族の現在位置が知れた。その場で、貸しラクダの手配をした。貸しラクダは砂漠のオアシスの宿数軒と草地にある宿数軒が共同で経営管理している。どこから借りて、どこの宿に返してもいい。借りる時に出払っていたり、返す時に他に一頭も居ないと宿に安く泊まれたり、借り賃が値引きになったりする。
二人は昼過ぎまでたっぷりと休んだ。
◇◆ ◇◆ ◇◆
昼過ぎに起きて、昨日買っておいた食事を摂った。アルノーは果物をとても喜んだ。干しイチジクと干しデーツを持って出よう。砂漠越えの用意をした。全部をすぐに積み込める様に用意してから、しっかりとした食事を摂った。
食事中、急にアルノーが顔を上げてにっこりしたので、見ると四人が近づいてきた。
「これから出発?」
「あぁ、一緒になんか食うか?」
「いや、今食べるとダンスの時、苦しくなっちゃうから。あ、なんか飲み物とか頼もうかな」
おつまみも追加して、四人は一緒に座った。
「どう?よかった?」
「あ、サミーラさんの技、試しました。シャハーブ、違う声出してましたよ」
アルノー、やめて。皇族とか、生まれた時からプライベート、オープンなのかも知んないけど、俺、皇族じゃあないからね。
「んんっ……今日から砂漠越えだから、お楽しみは先になるな」
ルネが言うと、カリマが小さい声でいった。
「ホダダーの族長に会うんでしょ。シャハーブ、献上何人よ?」
「十二人……もっと増えてるかも」
「宝玉もいるんでしょ?何か取引するのね、シャヒーンのことね。そうじゃなきゃ、連れてこないでしょ?」
ルネは曖昧に笑って誤魔化した。
アルノーはまるで友達のように四人と話してる。なかなか不思議な光景だなと思いながらルネは見ていた。
「シャヒーン、今日また水浴びした?私たちの香油とは香りが違うもの」
ノーラに聞かれてアルノーが答える。
「汚れちゃったから、さっきまた水浴びしたんだ」
「んんっ」
わざわざ説明いる?とルネが咳払いする。
「シャヒーンのつけてる香り、昨日も思ったけど、すごくいいね。ここらにはない花の香りでしょ」
「あぁ、そう。家から持って来た煉香油なんだ。ただ、暑すぎて、溶けちゃって、シャハーブが昨日店で違う容器を買って入れ替えた」
植物の油が使われている。融点が人肌くらいなので、ルブラ連合帝国では基本、手に載せないと溶けない。ここでは何もしなくても溶けてしまうのでいつもの容器では漏れてしまう。液体対応の深い容器に入れ替えたのだ。
「水浴びのたびに、シャハーブが髪と全身に塗ってくれるんだけど、伸びが良くて、あと、どこにでも使える」
「あぁ……なるほど。え?シャハーブ、ほんとにベタ惚れじゃん」
全員の目が集中したので居た堪れず、ルネは
「多めに持ってるから、一つ置いて行こうか?」
と、旅支度から出した。
「香りが少し違うんだが、これもいい香りだ。『愛を教えて』って名前の香り。シャヒーンの付けてるのは、『巡り会えた喜び』だ」
「やだ、何、香りに名前があるの?」
四人が頭をぶつける勢いで覗き込んだので、アルノーが、
「家に帰ったら姉さん達に贈るね。末妹として」
アルノー、もういじらないで……。
みんなに見送られて、ラクダ二頭、出発した。
「月が私たちをまた共に照らすときが来ますように」
「また、共に月に照らされましょう」
「月が二人を見守ってくれますように」
砂漠では、太陽より月が身近なようだ。
アルノーは少し、詰まった声で、
「皆さんも、お元気で。共に月を眺められるまで」
「じゃあな、またいつか。ありがとうな」
ルネの声で席を立った。
側の柱に張り付いていた、昨夜のヤモリが小さな声で鳴いた。
馬には乗れるアルノーもラクダは初めてだった。馬は立ったままで、鎧に足を掛けて勢いをつけて跨ぐ。ラクダは座ってくれるので、背中に乗るのは楽。そこからラクダが立ち上がるのに前脚、後脚、と伸ばすので、乗ってる人は空、地面を見る感じになる。また、ラクダは胴が馬よりずっと太いので両脚で挟む感が無く、制御しずらい。慣れたらいいのかも知れないが、ルネはアルノーの乗るラクダを自分のラクダの後ろに、二頭を繋いで歩き出した。
昼間の白いまだ細い三日月が登ってきた。反対側の太陽はもう少しで地平線。まだ照りつけてくるが、少し弱まっていた。左頬に太陽を感じながら、砂山の谷間をラクダはゆっくりと、休まずに歩いていく。見渡す限り、砂山だった。二人は買ったスカーフを頭と顔に巻いた。直射日光と目に入る砂を避けるために。
思ったよりも一気に夜がやって来た。
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