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第44話 また逢いましょう

ナスィームが素晴らしいお別れ会を開いてくれた。  その晩、飲んで、感極まったナスィームが大泣きしていた。精一杯のご馳走も出て、ルネもアルノーも来てよかったなとしみじみ思った。来るの大変だったけど。思った何倍もの成果があった。  翌日、午後出発した。お別れの挨拶に来たルネの子達と一人一人ハグをして別れた。アルノーは一回で子供の名前も生みの母の名前も覚え、顔も見分けていた。 「月が私たちをまた共に照らすときが来ますように」  また会いましょうと別れを告げて、ラクダに乗る。ラクダは別れには向かないかもしれない。ゆっくりなので、子供達がいつまでも追いかけてきてしまう。 「もうだめだよ、帰りなさい」 「危ないから。帰れなくなってしまう」  言ってるルネとアルノーが泣きそうになった。また会おう。遊牧民のキャンプがバリュティス領かグルーディアス領にきてる時がいいかな。  夜が更けてからテントを設営した。  二人で食事の用意をして、食べた。二人で片付けて休んだ。月は半分に近くなっていた。近くに街はない、静かで二人きりだった。 「族長の言ってた、あそこへ行く前も辛かったことって何?」  アルノーが隣で横になっているルネに聞いた。 「うーん……、リュスタール西帝国に潜入後、遊牧民とツテがなくて、教えてくれるって人に騙されて、娼館に連れてかれたんです。俺たち五人何にも知らなかったんで。男娼ですね。俺、まだその頃小さくて可愛かったんで、残念ながら人気者でした。娼館はやっぱり情報集めるのに便利でした。すぐ、大きくなっちゃって。情報も取れたので逃げたんですけどね」 「シモン、帰ったらしばく」 「まぁ、なんとかなったんで」 「十五とかの子供でしょ?情報は最初にちゃんと手に入れとくべきでしょ」 「あ、それが間違っててそんなことになったんで。それから見つけた最初の遊牧民のところは族長(ハーン)のグループじゃなくて」 「そこでも女達と?」 「まぁそうですね。そこで、女達との付き合い方とか、揉めない方法とか掴みましたから。あ、そっちには子供いないんで大丈夫です。俺娼館で最初の頃、高熱出しちゃって。それ、なんか知らないうちに薬飲まされてたんだけど。種無しになるやつ。お客に女もいたんで。それが、三年くらいで自然に治っちゃって」 「シモン、しばく。シモン、しばく。全然褒賞出すような内容じゃないじゃん。虐待じゃん」 「アルノー……」 「泣かないで、アルノー。俺たち、それがなかったら会えなかったんですよ。もういいんです」  泣いてるアルノーを抱きしめて、 「俺だってアルノーと会えて、こうして一緒にいられて、最高に幸せです」 「その頃のルネを助けてあげたかった……」 「今からずっと幸せに生きていくんで。アルノー、どこにも行かないでください」  ルネの思う幸せの何倍も幸せにしたいと思うアルノーだった。    

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