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俺の交際相手の名前は、野田 晶。アルファ男性で、出会いは冬初めの合コンである。友達が俺のためにと(若干ふざけていたような気もする)開催してくれた合コンに、彼はいた。友達にゲイだと伝えていたおかげでその場には男性しかおらず、しかも珍しいことにアルファ男性である晶がいたのだ。
オメガに混じったベータの俺は、ああ、今回はだめだなと早々に諦めた。
アルファは自然とオメガに惹かれるもの。曰くお互いに”匂い”というものがあるらしく、自然と惹かれ合ってしまうらしい。
その合コンではオメガが三人、ネコのベータの俺と、タチのベータが三人、アルファが一人という構成だった。
すぐに友達を恨んだ。これじゃ俺は場違いじゃないか、と。
オメガはみなアルファの晶に群がり、しかし諦めきれないタチのベータのがオメガと必死に会話する…そんな地獄絵図が出来上がってしまった。俺は完全に疎外されてしまって、もう帰ろうかな…と思ったとき、場がお開きになる。
二次会に行くという彼らに、俺は帰るからと伝えて帰路に着こうとした時だった。
後ろから誰かに話しかけられた。
「ねぇ、キミ!」
「えっ」
「ねぇ、別の場所で飲み直さない?」
振り返ると帰っちゃうのー?というオメガの甘い声が聞こえてきた。ベータの彼らはきっと内心喜んでいるんだろう。
なんでこの人は自分をちやほやしてくれるオメガじゃなくて自分のようなベータを選んだんだろう。そう思いながら、イイデスケド…と片言で言った。
彼はやった、と喜び、俺の隣に並んだ。
「伊藤くん…悠太…悠って呼んでいい?」
「あ、うん」
呼び捨てまでの五段活用を吹っ飛ばしていきなりあだ名か、と思うけどアルファである晶が呼んでくれるのがなんだか嬉しくて思わず頷いてしまう。
「俺のことも好きに呼んでくれていいから」
「じゃあ、晶」
「うん、なぁに」
ニカッと晶は人懐っこい笑みを浮かべた。確かにこの笑みには誰も勝てそうもない。
これが、アルファ。今まで関わり合いのなかったバースだ。
高校の時はクラスに一人オメガがいた。だが発情期を薬で完全に抑え込んでいた彼女は容姿こそオメガのものであったがほとんどベータ女性と同じで、特に関わり合うことはなかった。
大学に入ってからはもっと人口が増えたため同じ教室内にアルファやオメガが混じっていることが多くなったものの、関わり合いはほとんどなかった。
彼らは独特なグループを形成しており、アルファ一人にオメガが三~四人という形でいつも行動しているからだ。
そんな感じで今までベータ以外に話してこなかった俺はアルファとの初めての関りに緊張していた。
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