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晶に知っている店があるからそこに行こう、と言われ連れてこられたのは隠れ家のような雰囲気のバーだった。
ドアに着いたちいさなベルを鳴らしながらドアを開けば、カウンターと三っつの相席が並ぶ店内が見える。
「マスター、こんばんは」
そう晶が声をかければ、カウンターの中にいる黒いベストを着た男性が微笑んでこんばんはと返してくれた。彼の美しさからつい見惚れてしまい、こんばんはと返すのを忘れてしまう。晶に声をかけられるまで見つめてしまい、慌てて挨拶をした。
「お前が人を連れてくるなんて久しぶりだな」
「ふふ、さっきの合コンで気に入ったから連れてきたんだ」
「へぇ…」
ちらりとバーのマスターが見定めるように俺を観察してくる。視線に耐え切れず目を逸らすと、晶が悠、こっち、と声をかけてくれた。
気づけば晶はすでに座っており、隣に座るよう勧められる。大人しく隣に座れば、ね、と顔を覗き込まれた。
「さっきの合コン、退屈じゃなかった?」
「え、っと」
あなたはチヤホヤされてるのに退屈だったんですか、と言いたいのを我慢して退屈でした、と言う。
「なんで敬語。ため口でいいよ、同い年でしょ、大学生だし」
「う、ん…」
「…なに、緊張してるの?」
見透かされたかのようにそう言われ、こくりと小さく頷いた。
「アルファと、あんまり話したことないから」
「え~普通の人間と一緒だよ?」
「いや、でも」
普通の人間と一緒、ではないと俺は思う。
アルファのほとんどが社長をしており、名家に属している。スポーツ選手だって協議はアルファ/ベータ/オメガと別れているが、高得点を出すのはアルファが多い。
そんな人間の一端が何事においても平均的なベータと同じ人間であるはずがない。
さすがにそんな差別的なことは言えず、黙ってしまうと、晶がふふと笑い声をあげた。
「やっぱり、キミは他と違うね」
「え…」
「オメガはほら、俺たちに媚び売ってくることが多いからさ。逆にベータからはやっかみ買うことが多くてさ。ほら、俺らこんなだし」
手をひらひらさせて愚痴…?を吐き出す晶はどこか疲れて見えた。しかし次の瞬間には表情を変えてにっこり微笑んできた。
「キミは思っても口にしない。俺に喧嘩を売ることもないし、オメガみたいに媚びを売ってくることもない。俺が出会ってきた中で珍しい人種なんだよ。さっきの合コンだってタチのベータのを取られても俺を睨むこともなかったし」
「だって、世界はそういうものだし…」
そう、世界はそうやって回っているのだ。それに逆らう力など、俺にはない。
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