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初めての行為は怖かったが、同時にとても気持ちよく、とてもいい思い出となる 。
行為の最中、俺は何度も熱に浮かされたように晶を呼んだ。実際体中薬のせいで熱くて、頭は終始ぼんやりしていた。挿れられるその瞬間だって、痛いよりも気持ちいいが勝っていたように思う。
そして幸か不幸か気持ちと体のどちらもが一晩の内に繋がってしまった俺たちは、もちろん付き合うことになった。
ヒロに連絡した時は心の底からおめでとうという言葉をもらった。晶がこうして付き合うのは久しぶりなんだとこっそり教えてもらい、それで晶をすこしいじめたこともある。
付き合ったことで、より一層晶の色んな面を知ることが出来た。結構寝汚いこと、几帳面だと思っていたけど取り繕っていたこと、とてもたくさん食べること、カラオケで歌う選曲がちょっと古いこと。俺は晶のことを完璧人間だと思っていた節があったため、そんな晶を見るたびに意外性を感じた。それと同時に晶も自分と変わらない人間なんだと思えた。
体も、何度も重ねた。その度に好きが増えていって、俺はどんどん晶との恋愛にのめりこんでいった。
でも俺は時々不安になって晶に当たることがあった。どんなに晶が俺のことを好きでも、周りはそうはいかなかったからだ。ベータのくせにアルファと付き合うなんて…という声が時々聞こえてきては、俺を不安にさせる。アルファはオメガと、アルファはアルファと付き合うべきだという意見が多くて、俺を辟易させた。それに過去、オメガがいいと何度も振られたことがあったのも拍車をかけていた。
結局俺たちの関係性は生産性がないということで嫌がられることが多かった。オメガという男性でも妊娠可能な世界で、俺たちみたいなアルファと子供の産めないただのベータの関係性は、ひどく歪に見えるのだろう。そしてそんな話をされるたびに俺は晶に八つ当たりをした。
そんな俺でも晶はとても大事にしてくれる。仲のいい友達には付き合ったという報告を嬉しそうにしてくれたり、俺が少しでも不安にならないようにとオメガとの付き合いも減らしてくれた。俺はそれにすごく救われて、いつもありがとうが溢れて仕方なかった。
そうして付き合ってから一年。晶に大学を卒業したら結婚して欲しいとプロポーズを受けた。俺の返事はもちろん、Yesである。この不安定な世界で、結婚というただの書類上の関係であってもそれを可視化できるようになるのは俺にとって嬉しかった。
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