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第18話

水曜日。それは俺と雪が会う日だった。待ち遠しいような鬱陶しいような、そんな感情をいつも弄んでいる。 悠に、話せてないことがあるのは確かだった。雪と再会したのは俺たちが道にいる雪を無視してから数日後の水曜の事である。友達と遊びに行った帰り、俺は後ろから彼に抱き着かれた。匂いですぐに誰かわかった俺は、すぐに雪を自分から引き剥がす。たとえ匂いがわからないとはいえ、抱き着かれたということを悠に知られたくなかったからだ。雪は目にいっぱい涙を浮かべていて、仕方なく近場のカフェに連れて行った。雪はなかなか泣き止まず、俺はその間無言で彼を見つめていた。結局俺と雪はなにも話さず、連絡先を再び交換してコーヒーを一杯飲んでその場を後にした。それからはまた悠に隠れて友達と会うついでに雪の話を聞くようになった。悠ならわかってくれる、そんな甘い期待を抱いて。 そうして水曜日。俺は雪と会うためわかりにくい裏道にある喫茶店に入る。雪は既に変わらず先に着いていて、俺が席に着くとにっこりとかわいらしい笑みを浮かべた。 「晶さん!こんにちは」 「こんにちは、雪。調子はどう?」 先週雪は発情期だったらしく、こうして会うことはできないと先週の火曜日に言ってきた。オメガの発情期は相手がいないとかなりつらいと聞く。雪の家庭環境なら特にしんどいだろう。はやく雪にその全てを相談できる相手ができることを祈って、俺は今日も雪の好きなプリンを注文した。 「いつもありがとうございます」 頭を下げる雪は礼儀正しい。悠に少し当たりが強いことを除けば、二人は仲良くなれたはずだった。 「いいよ、これくらい。…発情期期間中は、大丈夫だったか?」 「…はい。その間は家族も僕の部屋に近寄りもしないので、楽と言えば楽です」 「そっか。ならいいんだけど」 雪の家族は、放っておけばいいものを、わざわざ雪の部屋に来て罵声を浴びせていくと言う。酷い話だ。家に居場所のない雪は自然と街を歩くようになり、そんな中運命の番である俺を見つけたらしい。これは最近聞いた話だ。見つけてもらえたのは光栄だが、俺には悠がいる。諦めてもらわないといけない。 「そういえば、僕、学年主席を取れたんです!」 嬉々として雪が話す。俺はそんな雪に純粋にすごいな!と褒めたたえた。 「ありがとうございます。兄さんにも言ったら褒めてもらえたんですけど、やっぱり晶さんに褒めてもらった方が嬉しいな…」 頬を赤くしながら言う雪に少し、ほんの少し心が動く。悠は結構照れ屋で褒めても素直にこうして素直に返ってきたことはない。こういう時雪のかわいさが若干羨ましくなる。いいな。こんな子に相手がいないのが不思議なくらいだ。 「本当にすごいよ。俺なんて高校の時遊んでばっかりで成績悪くてさ。大学も滑り止めでどうにか入ったくらいだよ」 「え、意外です。晶さんって賢いイメージありました」 「賢いのは悠だな。俺とは天と地の差があるよ。ほら、○○大学ってあるだろ、あそこに通ってる」 「ええっ、あそこって超難関じゃないですか!尊敬するなぁ…」 ほら。こういうとこもかわいい。悠は雪の話をするだけで機嫌が悪くなり話を聞こうともしないが、雪は悠の話をしてもこうやってちゃんと話を聞いてくれる。尊敬している、なんて恋敵には絶対言わない言葉だ。そういうところが悠と雪の違いだった。 こうして俺は雪に会う度悠と雪の違いを見つけては、ほらこういうところだ、と格差をつけるようになっていた。悠にはない部分が雪にはある、ほらまた、ほらまた…。こんなこと悠にも雪にも失礼だとわかっていた。わかっていても、秘密を守っていることがまるでスパイのようなカッコよさを感じて俺は雪に会うのをやめられなかった。 一時間ほど経った頃、俺は携帯の時計を確認して、じゃあそろそろ帰るよと席を立つ。 「あ、はい…」 あからさまに気落ちしたような顔をする雪。俺はそんな雪に向かってそっと腕を広げる。ほら、と言えば雪はおずおずと懐に入ってきた。そのまま抱きしめていると、ふと視線に気づく。振り返れば喫茶店のオーナーが俺たちを生暖かい目で見ていた。以前オーナーにかわいらしい恋人ですねと言われた時、俺は事を荒げたくなくてそうでしょうと肯定してしまった。それ以来彼は俺たちを本当の恋人だと思って接してきている。 数秒雪を抱きしめた後、そっと離し俺たちは店を出て別れた。 毎週水曜日はかわいい雪と話ができて、帰れば大好きな悠が出迎えてくれる。気分はよかった。たとえ隠し事を抱えていたとしても。 でもその日の帰った時の悠はどこかぎこちなかった。 いつものように笑っているはずなのに、視線が合わない。またどこか具合でも悪いのだろうかと聞いても、答えてくれない。最近の悠はずっとこんな調子だ。この間だって、俺は何も言っていないのに別れた後の話をされた。思わず怒鳴ってしまったが、あれは悠が悪いと思っている。たとえ雪とこうして会っていようとも、俺は悠と離れる気など更々ないのだ。 きっと前回と一緒で変な方向に思考が向いてしまっているのだろう、そう思って、悠を抱きしめた。しかし次の瞬間、悠は俺を突き飛ばした。 「っあ、ごめ…」 はっとしたような悠の顔。その顔は、今にも泣きだしてしまいそうだった。どうしたんだ、そう問おうとして…玄関のドアがドンドンと叩かれる音に驚いて振り向く。宅配業者ならインターホンを押すはず、ならば誰なのか。 玄関からふわりと甘い匂い買いする。 俺は匂いの示す意味を理解しないまま、ドアを開けた。胸にぶつかってくる熱い体。やっぱり、と言ってしまいそうなほど嗅ぎ慣れた匂い。それは俺がどうしてと口を開く前に、口や鼻に入ってきて俺の体を熱くした。 「ゆ、き」 発情だとすぐに分かった。俺はとにかくがむしゃらに雪を搔き抱くと、縺れ込むようにして部屋に連れ込んだ。大きな音を立てて二人して倒れ込んだせいで、何事かと悠がリビングから顔を出す。 「雪くん…っ?」 驚いた悠が俺たちを抱き起そうして、俺は咄嗟に触るな!と叫んだ。自分でもどうして叫ぶのかよくわからない。兎も角、雪に触られたくないという気持ちが先行して悠に怒鳴ってしまったのだ。悠は俺の大声に反応してすぐ離れると、なぜかぱっと口元を押さえた。 「…なんで、ここに」 それは俺も聞きたい。雪にこの家の住所は教えていないし、そもそも訪れたこともないはずだった。だが結果論として、雪は発情した状態でここにいる。なにがどうなっているのかはわからないが、俺の脳内は雪を守らなければならないという強い使命感に埋め尽くされていた。 「あきら、さん…すみません」 俺にもたれかかっている雪が気だるそうに話す。額からは汗を流し、頬を赤らめ服の首元を緩めようとする彼のなんと扇情的なことか。 「悠、退いて」 俺はすぐさま雪を横抱きにして立ち上がり、寝室に向かった。これまで寝室に鍵などなぜ必要なのだろうと考えていたが、まさか今になってその正解を思い至るだなんて。後ろ手にガチャリと鍵を閉めると、ドンドンと悠がドアを叩いてきた。でも俺はそれに構うことすらできずに、ベッドに雪を横たえると上から覆いかぶさった。頭の隅にある理性が、やめろと叫んでいる。大丈夫だ、最後までする必要はない。ただ楽になれるように抜いてやるだけだ。雪だって最後までして欲しいなんて望んでないはず。 「雪」 名前を呼べば、雪はとろけた瞳で俺を見る。その瞬間理性は消え失せて、俺は彼の口に自分の口を押し付けた。舌を絡ませれば、唾液が異常なほどに甘い。そのままうなじに舌を這わせれば雪が喘ぎ腕を俺の首に巻き付けた。待ち望んでいたかのようなその行動に俺はますます熱くなる。服をたくし上げ吸い寄せられるように乳首を噛む。甘い嬌声が頭の上から聞こえた。その勢いのまま雪のズボンを下着ごと取り去れば、よだれを垂らした雪のソレが露になる。軽く触って抜いてやると雪が大きな声を上げながら体を硬直させた。どうやら出さずにイッたようだ。そのことに気分がよくなり、俺は既に濡れているであろう後穴に指を突き立てた。 「いぁっ、ふ、ん…っ」 やはりそこは悠とは違って濡れていて、俺は興奮を抑えきれず指でそこをかき回した。雪の嬌声が段々大きくなる。指を引き抜けば、そこは物足りなさそうにひくひくと動いていてエロかった。 一度体を起こし自身の下着ごとズボンを引き下ろせば、雪がごくりと喉を鳴らした。俺のソレは悠とするときより大きくなっている。雪の足を子供のおむつを替えるように上げ、俺のをずぶりと突き入れる。 「ーーーっ!」 雪が声にならない嬌声を上げる。 これが、運命の番同士のセックス。悠とのセックスとは比べ物にならないほど気持ちがいい。 腰を動かせばぬるりと雪の愛液と俺のカウパー液が混ざって思わずイキそうになる。 ゆっくりと腰を動かし、そのうちスピードを上げていけば慣れてきて俺は相手は雪だというのに思いっきり吐精をしてしまった。悠相手にだって中で出したことなどない。しかしすぐさま理性を取り戻した俺は自身の引き抜い少しでもいいからと中に解き放った精を掻きだした。雪はその行動にすら感じてしまうのか、あん、と声を出す。 「雪、ごめ」 謝ろうとした瞬間、雪が俺の手を緩く握って、謝らないでと言った。 目は潤み、腹の上には自身の精液を乗せて言うその姿に、今度は俺が喉を鳴らす。もっとやりたい、もっと俺ので掻きわまして、喘がせて、孕ませて…。いや、だめだ。だめだ。そんなこと、俺も雪も望んでいない。 俺は雪のソレに手をかけて、上下に擦る。雪が物足りないと言わんばかりに身じろぎをするため、俺は空いた手で雪の開いてしまった蕾に指を入れていいだろう所をぐりぐりと押してやった。 「やっだ、あきらさ、ん、中入れてお願いぃ…」 「だめだ雪。それはできない」 既に致してしまった身ではあるが、これ以上するわけにはいかない。一度中で出したことで理性を取り戻した俺は、その後も雪の誘いには乗らず、雪が満足するまでー意識を失うまで、弄り続けた。

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