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承2
テレビのリモコンをテーブルに置くと、大五郎は「んでね、うさごろうと一緒に観覧車に乗るの♪」とはしゃぐ昊を肩に担いだ儘、応接間から台所へと向かった。
「んじゃ、飯喰ったらデートにいくか?」
「いくいく♪」
昊は「嬉しい♪」と大五郎の首にぎゅっとしがみ付いて、「うさごろう、大好き♪」と大五郎の無精髭に頬をすりすりさせる。
そんな昊は大五郎の無精髭が好きらしく、「じょりじょりするの♪」とよく大五郎に頬擦りをさせろとせがんでいた。
変な嗜好を持っているなと最初は思ったが、慣れれば嬉しいことこの上ない。
大五郎が昊を担いだ儘、台所に入ろうとすると昊が急に降りると言い出す。
「ん?どうした?」
大五郎が不思議そうな顔で昊を見たら、昊が身体をモジモジさせた。
「あのね、ハルキに電話をするの。一緒に遊園地にいこうって言うの」
ダメ?と昊に上目使いで頼まれたら、大五郎は嫌だとは言えない。
大五郎は肩を落として溜め息を漏らした。
なるほど、こう言う魂胆だったのかと大五郎は早々と引き上げた陽毅のことを思い出す。
普段だったら、噛み付いてでも昊から離れない陽毅が素直に退いたのが、気になっていた。
「陽毅と約束したのか?」
大五郎がそう訊くとどうして解るの?と言う顔で昊は頷いた。
「ハルキがね、遊園地の割引券があるからうさごろうと俺とハルキの三人でデイトしようね♪って言ってたの」
そして、昊はバツの悪そうな顔で自分の正直な気持ちを言う。
「俺、ハルキともデイトしたい。ダメ?」
昊の純な心に付け入る陽毅に腹を立てるが、大五郎は昊が悲しむ顔は見たくはなかった。
お願いと大五郎の顔を覗き込む昊に、大五郎は腹を括る。
オレも甘いよなと呟きながら、大五郎は年長者の威厳と余裕さを見せるが、コレが後手を引くことになるとは思っていなかったようだ。
「しゃーねぇな、今回だけだぞ」
今後はないと言う約束を取り付けて、大五郎は昊に許可を出す。
「わあああい♪うさごろう、ありがとう♪」
序でに降ろしてやると、昊はそう言って台所の横にある居間まで走っていき、嬉しそうに電話の受話器を上げる。
陽毅の携帯番号を知らない昊は大五郎に泣き付いて来ると思ったら、「1」と言うボタンを迷いもなく押した。
トゥルルルルと言う発信音がして、ピッと言う音がする。
「もしもし、ハルキくんですか?俺、ソラですけど……」
昊は落ち着いた口調でそう言うと、受話器の向こう側からは、陽毅のこう言う声が聞こえて来た。
「ハイハ~イ、昊くん♪陽毅ですよ~♪」
と。
四十二歳のオッサンとは思えない能天気な口振りに大五郎は呆れるが、その前に、短縮ダイヤルの一番に登録してある家政婦である轟の携帯に出る陽毅が腹立たしい。
眉間にシワを寄せた憂鬱そうなそんな顔の大五郎は、当然、昊の手から受話器を取り上げていた。
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