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転
轟が根回ししてくれていたにも関わらず、後手を引いたことは間違いない大五郎だが、腑に落ちないことがあった。
いくら陽毅に口止めされていたと言っても昊の大五郎好きは変わらないハズ。
その昊がなぜ、大五郎が不利になることをしたかだ。
もしかして、自分よりも十歳若い陽毅の方がイイと思い始めて来たのか?
いや、昊のおじ様好きは年期が入っている。
と言うことは、施設長の息子である陽毅が年毎に施設長に似て来ているからか?
大五郎に逢うまでは、昊は施設長のことが大好きだったしな………と余計なことまで考えてしまって、大五郎は更に一人で落ち込む。
「あのさ、昊?今日、…………陽毅の二人で、遊園地いくつもりだったの……か?」
そうおずおずと昊に聞くのは、大五郎に自信がないからである。
ソレなのに、
「うん♪ハルキと二人で遊園地いくつもりだったの♪」
昊はニコニコ顔でそう言う。
大五郎の心が軋む。
立ち直れねぇと膝を折ろうとしたら、
「そうするとね、うさごろう、怒って遊園地に一緒に付いて来るって、ハルキが言った♪」
昊がそう付け足した。
大五郎は豆鉄砲を喰らった鳩のように暫くは動けなかったが、心の軋みはなくなっていた。
昊は他にも何か言いたそうだが、言葉が出て来ないらしく、「う〰っ」と暫く唸ってからトレーナーのポケットからくしゃくしゃの紙を取り出した。
ちらっと大五郎は見てみるが、ミミズがはったような文字で読めない。
「えっとね、うさごろうにはさぷらいずなんだって♪うさごろう、今日、誕生日なんでしょう♪」
そう昊は言うと、そのくしゃくしゃの紙をまたトレーナーのポケットに戻した。
「ふーん、今日、オレの誕生日だったんだ」
「そ、おめでとう、うさごろう♪」
「おう、ありがとうさん♪」
受話器越しにそう言う昊と大五郎の会話が聞こえて来て、「………ちょ、昊ちゃん(昊)、ソレ、大五郎さんには内緒って………」と、受話器越しの轟と陽毅の声が重なって、受話器を持っていた大五郎は成る程と受話器を元に戻した。
「な、昊。今日は陽毅は置いて、二人だけで遊園地にいこうな♪オレと昊は、邪魔なんだってさ♪」
「えっ、ハルキは連れていかないの?」
三人でデイトじゃないの?
と、昊は言っているが、実は陽毅が運転すると大五郎はフリーになるから、車の中でイチャイチャ出来ると思っていた昊である。
昊がそんな邪なことを考えているとは全く思ってない大五郎は昊を抱き上げて、「陽毅はお留守番だ。そもそも、デートは恋人の二人でするモンだろう?」と言うと、昊は「俺、うさごろうの恋人♪俺、うさごろうと二人でデイトするの♪」と大はしゃぎだ。
「んじゃ、さっさと飯食って、いくぞ?」
「うん♪」
こうして、大五郎と昊は陽毅から貰った割引き券で遊園地にデートしにいくことになったのであった。
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