8 / 9

  「だろう?オレのかわりにふうしてくれたんだぜ?」 大五郎も昊のふうが上手だと言って、床に転がっている陽毅以外で乾杯してからご馳走を食べ始めた。 「………お、俺への慰めとか、謝罪は?」 「知るかよ、昊は悪くねぇよ」 「そうよ、大人気もなくふうしようなんて思っているから……」 「思ってません!!………って言うか、俺、ロウソクに火を点けただけじゃん!!」 「知らないわよ、そんなの」 轟はそう言って「男のクセにグチグチ言っちゃってみっともない」と溜め息を付いていた。 元凶の昊は大五郎のお世話で大忙しだ。 「うさごろう、アーン♪」 と、ケーキのど真ん中にあるイチゴをフォークで刺して大五郎に食べさせている。 陽毅はそんな情景を目の当たりにして、「どうせ、おいらはお邪魔ムシですよ」と、部屋の隅っこで一人いじけていた。 そして、 「ホント、ああ言う大人にはなりたくないわよね?」 轟がそう言って、「このエビフライも美味しいわよ♪」と大五郎と昊に勧めていた。 「トドロキ、天才♪」 一口かじった昊はそう言って轟のことを誉めていたが、実は料理もケーキも陽毅が全部作っていたとは言わなかった。 「おお、なかなか、いけるじゃねぇか?」 轟の味を知っている大五郎もそう言うが、決してソレが陽毅の味だとは言わない。 部屋の隅っこで聞き耳を立てている陽毅はと言うと、タイミングを逃して復活出来ないジレンマに苛んでいた。 「不憫ね♪」 「ああ、不憫だ♪」 大五郎と轟はそう言うが、微塵もそうは思ってないから、やるせない。 「?……フルビン?」 そして、昊、一人だけが解らない儘だが、そう大した問題ではないから、楽しいお誕生日会はことなく終わるのであった。  

ともだちにシェアしよう!