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第4話
アイスをおごってもらった日に、お礼のメールを送って以来、薫は鷹也と会うどころか、連絡も取っていなかった。
用事を作って会いに行くか、連絡をしたいと思うのに、考えすぎて行動できなくなっている。
(しょっちゅうウロウロするのも変だし、用事もないのにメールするなんて、おかしいし)
くだらない、たわいのない文面を送れるほど親しくはない。
その事実に落ち込みながら、薫は大学に行かない日は、鷹也のことを考えないようにと、小物制作に没頭した。
(注文品とか、溜まってるし)
それらを時間のあるうちに、仕上げておこう。試験の前になれば手が止まってしまうから、そのぶんのストックも作っておきたい。そして材料が不足したら手芸店に行く。そのついでにゲームセンターに顔を出せばいい。買い物をしに来たついでと言えば、不自然じゃない。
考えないために制作に没頭しているつもりが、鷹也に会う口実づくりのための材料消費になっていることに気づかないまま、薫はどんどん作品を完成させていった。
そんな日々が続いている中、スマートフォンに着信が入った。
ストール留めの飾りを作っていた薫は、手を止めて画面を開き、体中を高揚させる。
【だらりくまの新作プライズが入荷したぞ】
文面に、だらりくまのマグカップ画像が貼りつけられていた。
(行く理由ができた!)
無意識に浮かんだ言葉に心をはずませ、いそいで返信をする。
【教えてくれて、ありがとうございます! 明日にでも行かせていただきます】
送信し、スマートフォンをにぎりしめていると、着メロが鳴った。
【俺は早番だから、六時に終わる。予定がないなら、合わせて来いよ】
鷹也と夕食を共にできるかもしれない。
誘いのメールに喜々として、用事はないからその時間に行くと返事をし、薫はクフフと体をまるめた。
(明日、会える)
薫は文面を何度も読み返して、よろこびを噛みしめた。
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