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第8話
峠道に差し掛かる前、健吾はバイクを道の端に停めた。
「なぁ、今から結構カーブあるしな、お前が振り落とされん前に言うとくわな」
健吾は笑いながらそう言うと、手を後ろにやって俺の左右の膝頭を持って自分の腰を挟み込むように押し付けた。
「カーブの時な、俺と一緒にお前も体を倒してや。お前の脚で俺のここんとこを挟むんやで」
健吾はそう言って、もう一度俺の太ももの外側を掴んで、自分の太ももの外側から腰骨辺りを挟ませた。
「シートにベルト付いてるから、そのベルト持ってもええけど、俺に掴まっといた方がええんやったらさっきみたいにしといて」
そんなの健吾に掴まる方がいいに決まってるだろ。分かりきったこと訊くなよな。俺は心の中で言った。
俺はしれっと健吾の腹に腕を回すと、健吾は俺の腕を掴んで、もうちょい下辺りで持っといて、とたぶん臍の下辺りを掴ませた。
「ほしたら、行くで。もし怖かったら手で俺の腹叩いて合図するんやで」
なんだか、絶叫系のアトラクションに乗る気分だ。いや…それよりも少し冷静に考えると、いやエロい目で見ると、これは結構やらしい構図だ。
健吾の尻に俺の股間を密着させて、俺の内腿で健吾の太ももを挟み込む。更に俺の手は健吾の臍の下辺りを掴んでいる。もしかしたら小指くらいは健吾のムスコの上にあるかも。絶対そうだ。
俺は、やらしいついでに、どんでもない妄想をした。俺たちの服が消えて無くなってしまう妄想。健吾の逞しい背中に抱きついて、俺の熱くなった股間を健吾の尻に擦りつける。そして後ろから回した俺の指は健吾のムスコを弄ってる。一分いや三十秒だけでいいから、そうならないかななんて。
そんな様子を俯瞰すると、男が真っ裸でバイクに跨ってるのは、健吾はたぶんカッコいいと思うが、細くて色白の俺は、それこそ健吾に取り憑いた妖怪みたいだろう。さしずめ子泣き爺いあたりか。
カーブを曲がる度に俺は内転筋に力を入れて健吾を挟み込んだ。健吾の広背筋がぐっと引き締まったり弛緩したりするのを引っ付いている俺の薄い胸は感じていた。健吾の臍の下にある俺の手は、しっかり掴まりながらも、ここぞとばかりにもう少しだけ下へ移動させて健吾のムスコの周辺を押さえていた。でも、健吾はバイクに乗るためなのか、ヘビーオンスのジーンズを穿いているせいで、ムスコの膨らみなんてさっぱりわからなかった。まぁ、そこは想像で楽しんだ。
緑の中の峠越えエロエロアトラクションはあっという間に終わってしまった。それでも、三十分くらいは走っていただろうか。
峠道から国道へ出る交差点で信号待ちをしていると、健吾は後ろを振り向いた。
「唯斗、大丈夫か?…ここからは急な道はあらへんからな」
「うん、平気。スリルがあって楽しかったよ。後ろに俺がいて、走りにくくなかった?」
「ああ、ぜんぜんや。お前、乗んの上手いわ」
そんなことを言われると、また別の意味での想像をしてしまう。実際には健吾の上に俺が乗るなんてことは絶対にないことだが、それでも言われた瞬間は、裸の俺たちの映像が頭の中に浮かんでしまった。初めてこんなにも健吾に引っ付くことができたせいで、俺の頭の中はエロモード全開だった。
さっきのメランコリックな想いは、京都の山々へと吹っ飛んでいった。
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