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ちいさな(※主観)智くんと、オレのプライド防衛戦 1
大学四年生になった最初の土曜日、オレは本格的な就職活動が始まる前の息抜きにとサークルの親睦会……という名の合コンへと顔を出した。
インカレサークルといえば聞こえはいいかもしれないが、結局は気軽にセックス相手を見つけるための出会い系サークルだ。
大学生が使いやすい、街の喧騒から少し外れた地下の居酒屋は換気扇の鈍い音と、安酒と煙草の臭いが混じり合う独特の熱気に包まれていた。
オレ……龍成(りゅうせい)を囲む女の子たちの黄色い声や、ライバル視してくるαたちの視線。188cmの恵まれた体躯にαらしい整った顔を持つオレはどこにいても自然と中心に座るべき「強者」だ。
ざっと見回してみてもオレよりもスペックの高いαは見当たらない。
これなら今回も好きにお持ち帰りすることができる……と笑いかけたところで一人、引っかかる奴が座っているのに気付いた。
「……と。あいつは……」
座敷の隅、肩を折りたたむようにしながら申し訳なさそうに烏龍茶のグラスに口をつけている男。
目立たないようにしていても人目を引く顔立ちに、背を丸めていても随分と大きいとわかる体格をしている。
「……笑えばいいのに」
涼しげな目元に真っ黒だがサラサラとしているとわかる黒髪が印象的だった。
胸を張って顔をあげて微笑めば……オレには敵わないだろうが、それでもこの場でそんな気まずそうな顔をしなくても済むほどのスペックだ。
引き結ばれた少し肉厚な唇を緩めて微笑めば……きっと……
「 っ」
慌てて首を振って立ち上がる。
隣に座る女の子がチラチラとハイネックからネックガードを見せてくるから、きっとΩなんだろう。その子が下心を隠しもしないで引き留めようとしたけれど、それを振り切るようにして部屋を出た。
理性がアルコールに溶かされたか、それともあえてなのか、フェロモンを振り撒きながら酒を勧めてくるなんて……ナニを狙っているのか明け透けすぎてがっかりだった。
軽い付き合いを求めてはいたが、あのΩじゃ避妊具に穴でも開けられそうだ。
トイレを済ませて、あのΩの標的を変えさせるにはどうしたらいいかと考えながら座敷までの途中にある喫煙所に差し掛かった時、下品な笑い声が耳に入った。
「……見たかよ、あの隅にいるデカい奴」
それだけでこの二人が誰の噂をしているのかすぐにわかる。
「何しに来たんだって感じで座ってる奴だろ?」
「ああ、新入生の……えぇっと、智(ちはる)だろ? あいつ、冗談きついよな。あんな岩石みたいな体格のくせにオメガなんだってよ」
はは と弾けるように上がった笑い声。
笑う理由はわからないでもない、Ωは基本、男でも華奢で小さくて庇護欲をそそる外見をしているものだ。
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