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雪虫6 1

 近頃編み物にハマっている。  毛糸を編むんじゃなくて、細いキラキラとした金線に見えるような細い糸なんだけど。 「しーずる! 何してんの?」  背後からひょっこりと覗き込んでくるのはセキだ。セキ……なんだけど、オレはちょっと気まずくて視線を逸らしてしまった。  頭のてっぺんからつま先まで見て、包帯は巻いてたけど指はちゃんとあるし、目もちゃんと見えているみたいなのを確認してから数週間……オレは、やっぱり気まずくてセキをまっすぐに見ることができないでいた。  二人の間の恋情? 愛情? が、どうなっているのかはオレに口出す権利はなかったけれど、セキは以前、大神のヤクザがらみの人々に大怪我を……いや、怪我だけじゃない、心に傷をつけられていたことに対して、ヤキモキした気持ちを抱えているのは確かだ。  明らかに惹かれあっている二人なのに……マーキングして、他の人間を近づけさせないようにしているくらい、セキのことが好きなはずなのに、他の人間に触らせるなんて……  オレには理解できない。 「しずる?」 「あ、……ああ、編み物してる」 「器用だねぇ」 「器用ってか、怪我で入院して、しばらく安静にしとかなきゃいけなかったから、この機会に覚えておこうと思って」  そういうオレの心の中を考えもしていないセキは、机の上に置いてある練習作品を手に取ってじっくりと眺め始める。 「体は?」 「うん? もう包帯も全部取れて元気だよ!」  勢いよくピースを差し出されて、目潰しをしてきそうな勢いに思わず体がのけぞってしまった。 「随分、小さいの作ってるね」 「ああ、これか? 糸で編んでるからな」  指先に挟まれた、半分くらい完成した指輪。  これは、金属が身に付けられない雪虫のために作る、金色のレース糸で編んだ結婚指輪だ。  つい先日のことだった。雪虫の大好きな絵本作家が初めてのサイン会をするって情報を手に入れて……ここは一発! 番のために頑張っちゃおうかなって思い立って、病院のベッドの上で大量に申し込みハガキを書いた。  その一枚で受かって、「金の王子、銀の王様、銅の騎士」のサイン会に行ってきた……ら、その場で作者にひざまづいて番になりたいとプロポーズ? している瞬間に立ち会ってしまった。  その真剣な横顔と、嬉しそうに綻んだ作者の笑顔が印象に残っていて……オレも、指輪を贈りたくなった。  ただし、雪虫は金属アレルギーがあって、体に直接触れるような指輪なんて贈れないんだよな……って落ち込んでいた時に見つけたのがこれだ。

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