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雪虫6 47
それはまるで、山の怪異に化かされているような気分だった。
いっそのこと、大神が企画したドッキリ企画だとかそんなものだったらいいな と淡い期待をしたけれど、それはあっという間に擦り潰されてなくなってしまう。
「ぁ……」
「これなら、会ったことがあるって、思い出す?」
かな? と首を傾げてオレを見上げるのは、昨日も顔を合わせたセキだ。
「ぇ、ぁ、……あ……」
「これも覚えてない?」
ちょっと頬を膨らまして拗ねる。
それは雪虫と同じクセで……
「セキ……?」
反射的にすん と鼻を鳴らすように臭いを嗅いでしまう。
目の前にいるのはセキで、鼻先をくすぐるフェロモンもセキのものだ。……ただし、わずかに残されたさっきまでのαのフェロモンも感じ取れるから、すがるがいたことを思い出させる。
「あの時は、オレを助けようとしてくれて、ありがと!」
ニカ と笑う笑顔はオレの記憶の中のそれと寸分違わない。
「あ……これって、おっさんに殴られてどっかおかしくなっちゃったとか、そんな系?」
「んふふ。その方がいい?」
反対側に首を傾げ直して尋ねるセキの向こうに、渋い顔をした大神が見える。
肩越しに見える厳しい表情は、セキの傍にいる時の表情とはちょっと違っていて……
「本物 じゃ、ない?」
オレは飛び上がると、顔が痛むのも気にせずに深く息を吸い込んだ。すんすんとフェロモンを嗅ぎ分けるために鼻を鳴らすようにして吸い込んで……そこでやっと、わずかにセキの匂いとは違う部分を見つける。
パチパチと目を瞬くと、目の前のセキは揶揄うように笑った。
「あの時も、そうやって注意深くしてれば、気付いたのにね。可哀想に」
訳のわからないまま憐れまれるのもごめんなのでムッとして返す。
「……じゃあ、あの時……ヤクザに連れ回されてたのは、貴方だった……?」
なのに、庇おうとして立ち回って大怪我を負って……
「え……何? それ、どういうこと?」
「君だってできるでしょう?」
そう言うとセキの姿をしたすがるは指先をちょいちょいと動かす。
ふわりと漂ってくるのは……大神の威嚇フェロモンだ。
「 っ」
とっさに振り払おうとしてもセキの姿をしたすがるが手を伸ばすたびに追いかけるように、フェロモンが放たれる。
いつも苦々しく思うおっさんの威嚇に、イライラと手を振り回した。
「やめ っ」
「君も同じこと、できるでしょ?」
ニマニマと笑う表情はセキのものとはちょっと違う。
オレの記憶の中にいるセキと寸分違わないように見えるのに違う、そのチグハグさに眩暈がしそうだった。
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