372 / 408

雪虫6 49

 人里離れ……てるかどうかはわからないけれど、山の中の小屋にナイスバディな金髪碧眼の美女と二人きり、どこのホラー映画だよ! なんて今のオレには笑い飛ばせる話じゃなかった。  ほんのわずかな休憩も挟まないまま、パソコンの扱いからデータの作り方、資料の集め方にお茶の出し方やら電話の出方をみっちみちに教え込まれて…… 「ったく、直江はこの子に何を教えてたの? ちょっとは直江から話を聞いたって聞いて安心してたんだけどこんなじゃ全然使い物にならないじゃない。明日には終われるかなって思ってたのになんなの⁉︎」 「……な、なんのはオレが知りたいです……」  ぽち……ぽち……とキーボードを叩いて、遅いと怒られる。 「一秒間に10〜12打鍵!」 「はっや! それ人間の動きですか⁉︎」 「それぐらいやんなさい! しずるだって、やることやらないと帰れないんだから!」  「う……そ、それは困る……ホント困る」  昨日は雪虫に会えなかったし、これ以上会えなかったらオレ、干からびる。  っていうか、ここに来てから飲まず食わずで本当に干からびそうなんだけど。ちょっと空腹だなってくらいの時は、言い出すのも怖くてじっと我慢してたけど、いい加減それも難しいくらいに腹が鳴り始めた。  これ、全部こなすまで食事すらなしってこと……ないよな? いや、大神ならやりかねない。  最悪オレはそれでもいいけれど、雪虫がちゃんと食事をできているかは教えて欲しい。 「あのぅ電話したいところがあるんですけど」 「警察?」 「え? してもいいんです?」 「してもいいけど、ここには来ないけどね」  あはは と笑いながらキーボードを示されて……ぽちぽちとキーを打つ。 「まぁそんなことだろうと……オレの番に連絡入れておきたくて」  オレの なんて言葉を使うと、ちょっと照れ臭くて胸がギュンってするけれど、項を噛んだ以上はちゃんとした番なんだから文句は言わせない! 「あぁ、あの子」  ふぃと視線を外されて、妙なざわつきに手を止めた。  東条もそうだったがすがるもだ。どうしてだか雪虫を知っている人たちは、雪虫の話を出すと悼むような顔をする。 「…………まぁ、算段はつけてあげるわ」  てっきり「駄目」と言われると思っていただけに、思わず返答に困る答えがきた。 「あ、あ、あ、ありがとうございます?」  しどろもどろに返したオレにすがるが何か言おうとした瞬間、グゥ! と派手な音がオレの腹から鳴り響く。それはさすがに恥ずかしいぞ と思っちゃうくらいの大きな音だったが、育ち盛りが何も食べてないんだから仕方ない。

ともだちにシェアしよう!