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雪虫6 50
「あら? 貴方……もしかしてお腹空いてるの?」
すがるの言葉は心底意外だとでも言いたげだ。
「まぁ、飲まず食わずなんで流石に」
耐えろと言われたら耐えられるけれど、鳴るのは止められない。
恥ずかしさと開き直りでげんなりと肩をすくめたオレを、すがるは珍しいものでも見るように見つめて……「食べ物を探してくるわ」と言って背中を向けた。
戻ってきたすがるが手にしていたのはカンパンの缶詰だ。
見たことはあったけど手に取ったことは初めてで、くるくると手の中で回して眺めた後、思い切って蓋を開ける。
「どうぞ」
オレにつきっきりで指導していたすがるは、オレ同様何も食べていない。さっきの行動から空腹を感じてはいないようだったけれど、まずはすがるに差し出した。
「私? 私はお腹いっぱい。消化にはー……もう少しかかるかなぁ」
気だるげに肘をついて呟く姿は、自分の腹の具合を確かめているようには見えない。
「そう……なんですか」
その痩身を保つためなのか……それとも、ざらりと崩れた皮膚の下にあったものがそうさせるのか……聞くべきなのかそうでないのかもわからないまま、カンパンを一口頬張る。
「ああ、水もいるんだっけ? 人って大変ね」
またふらりと背中を向けたすがるに、さっきの言葉は? とは問いかけなかった。
代わりに、気になっていたことを尋ねる。
「どうして大神さんはこんな面倒なことをするんでしょうか? 大神さんなら他にいくらでも……」
ペットボトルの水を持って帰ってきたすがるに、「直江の代わり」という言葉は言えずに飲み込んだ。
「意外と敵が多いのよ、彼」
意外でもなんでもないなんて言えなくて、カンパンを齧りながらうんうんと頷く。
「特に盲信する人がね。そういう人って、何を犠牲にしても入り込んでくるから……」
「?」
オレは返事らしい返事を返せない。
何を言っているんだろう 程度の感想は言えたけれど、すがるが求めているのはそういうものじゃないんだろう。
「食事の間、お話ししてあげる。君が聞かない、この体の秘密」
ちゅ と投げキッスをされて、一瞬居た堪れない感情が湧いたけれど、それを抑え込めるくらいにはオレは大人だ。
「むかーしむかし、バカな男がいました。そのバカな男は、運命と番ってはいけないという呪いを受けているにうもかかわらず、運命を見つけて愛を囁いてしまった」
「……呪い?」
「ふふふ。そしてそのバカな男は番に逃げられ、多くの人を犠牲にしながら番を追い詰めて追い詰めて……そして最後の最後に、すり抜けられてしまった」
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