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雪虫6 51
やっぱりオレの頭の中は「?」状態だったが、引っかからないものがないわけじゃなかった。
「そのバカな男は探して探して、探し回り、木を隠すなら森の中だとばかりにオメガたちを殺して回ることにした」
「は⁉︎」
「そうすれば、数が減って自分の番が見つけやすくなるでしょ?」
狂気だ。
自分の半身でもある番を探すために、他のΩを殺してまわるなんて……
「そしてバカな男は番を見つけて手に入れようとしたが、時すでに遅し、そのオメガはバカな男から逃げるために、バカな男がやってこられない場所へと旅立っていた」
αからの熱烈な求愛は、Ωを殺してしまうほどのものだった?
「ところがバカは男は諦めなかった。何せ自分の番だ。教理に背いてでも欲したオメガだ、手放せるわけがない。そこでバカな男は神の摂理をも侮辱し始めた」
どうして「神」が出てきたのか……オレは口の中でカンパンをふやかすふりをしてじっとしていた。
「娘がいなくなったのなら、作ればいいのだと」
「そんな……ぬいぐるみじゃあるまいし」
「ふふふ。ぬいぐるみだった方が遥かに良かったでしょうね」
すがるは長い爪のついた指先をオレに向けると、艶やかな笑みをこぼした。
「今度は乱さないでよね」
そう言った途端に崩れ始めた指先の中から出てきたものは、あの瞬間見たものが現実だったんだと痛感させるには十分なものだった。
人とは言えないがそれ以外の生き物かと問われても答えが出ない、そんな指がオレに向かって伸ばされて……
「バカな男はやっちゃいけないことを繰り返したのよ」
「…………やっちゃいけないことって」
「神に楯突くこと」
唐突に抽象的になった言葉に、返事ができなかった。
そんなオレを見もせず、すがるは独り言のように元に戻った綺麗な爪の先を小屋のランプに翳しながら、「その結果よ。これは」と呟いて皮肉げに笑う。
すがるの言葉が何を言っているのかさっぱりわからなかったけれど、でもオレの記憶の中に引っかかるものがないわけじゃなかった。
以前に瀬能が話してくれた運命が自分の娘だったって話に似ていると……
「その、運命と番ってはいけないって呪いは、どうしたら解けるんですか?」
「うん? 解けないのよ。その呪いは同時に祝福だから」
「?」
「神さまの与えたもうたものだから祓うことも解くこともできないのよ」
爪の先から視線を戻したすがるの瞳は、虫のような無表情ではなく、どこか悲しげな色を含んでいた。
神が与えたもの? それが呪い? オレには雪虫がいるから、番の存在を知ってしまっている側から言わせて貰えば、運命と出会って何もできないって言われたら呪いだと思う。
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