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雪虫6 52

 でももし、すでに恋人とか、番がいて……そこに運命が現れたら、その呪いは神さまからの祝福のように思う。  呪いも祝福も、両方とも同じものなんだろう。  見る人間の立ち位置によるだけで。  オレは研究所に勤めていて、つかたる市に住んでいるからΩと関わったりすることが多いけれど、他の地域なら見かけることすら珍しい。そんな中で番に会えたオレって強運! 「じゃあ、その人は絶対に運命の番と結ばれないんですね」 「そうね」  肯定されてしまうと、もうその「バカな男」に同情するしかない。どうにもならない力に抗えない悲しさは、身につまされてよくわかる。 「それは……悲しいことですね」  人の命を犠牲にしてまで番を求めることがいいことだとは言えないけれど、雪虫が腕の中から去ってしまったらオレもそんなことをしてしまうかもしれないと、ふと思った。  オレが山小屋から解放されたのは秘書業務を完璧に習得できたから……ではなく、食料がなくなったから。 「あの……カンパンはもう限界です……口の中が口内炎で大変なことになってて」  もごもごと話すだけでも精一杯だった。  繰り返し与えられるカンパンを、ないよりはマシ、ありがたいありがたいと食べることができていたのは初めのうちだけだ。食べられるだけ贅沢! と思えども、口も痛むしいい加減飽きてくる。  すがるはそんな自分を意外そうに見たけれど、置いてある缶詰がもうないから仕方ないわね とため息をついてくれた。  大神もすがるもオレを殺したいわけじゃないみたいで一安心だけれど、真綿で首を締めるようなこの扱いを考えると、じわじわとなぶり殺したいだけかもしれない。  久しぶりに木々以外がある街中に戻って……オレはちょっと、研究所に行ってもいいよって、言われることを期待した。 「はぁ? まだ無理に決まってるでしょ?」 「……ですよね」  もう何日雪虫に会えてないか……数えようとしたけれど、発狂しそうになるので諦める。 「なんでだよー……ちょっと番と二人で幸せになりたいだけじゃないですかー……なんで会えないんだよー……オレだって頑張ってるじゃないですかー……もう口の中は口内炎でザクザクだし、心もザクザクしてるんですよー……お願いしますよー……おねが…………」  すすり泣きながら嘆願したところで聞き入れられることなんてないだろうけどって思いつつ愚痴っていたら、携帯電話の着信音に遮られてしまった。  オレの携帯電話はとっくに手元から消えているから、この音はすがるのものだ。 「あらぁ? 大神? タイミングがいいわね」  そう言いつつすがるはキョロキョロと辺りを見回し、信号の監視カメラを見つけてちゅ と投げキッスを送った。  何をしているんだろうと見ていると、それまで規則正しく機能していた信号が瞬きするように点滅する。まるでそれは先ほどすがるがしたキスへの返事のようで……  

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