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雪虫6 53

「ただの偶然……だよな?」  監視カメラに向かって決めポーズを披露するすがると再び点滅する信号を交互に見比べる。 「ええ〜? じゃあ研究所に向かうわ……仕方なしよ?」  すがるはまだまだ言いたいことがあったようだったが、大神は何も聞かずに通話を切ってしまったらしい。柳眉をキリッと吊り上げて、すがるは沈黙してしまった携帯電話に向かってひとしきり文句を言い続けていた。  はやる心がそうさせるのか、ついすがるを追い越して研究所の受付に飛びつこうとして首根っこを引っ掴まれてしまう。 「貴方はここで大人しくしておいて」 「そんな! ここで⁉︎」  受付⁉︎ ここをちょっといったところには食堂があって、運が良ければそこに雪虫がいるかもしれないっていうのに、ここでじっとしていろ⁉︎  そんなのできるわけないでしょうがーーー! 「ちょっと番の顔を見てくるだけです!」 「会うと離れがたくなるわよ」 「あ……会えない方が、嫌なんです! ほんの2分くれたら行って帰って来れますから!」 「2分でイけるの?」 「え? 走れば……」  真面目に返したオレに、すがるはちょっと吹き出した。 「さっさと行ってらっしゃい。5分で終わらせてくるのよ」 「? はい、じゃあ5分以内に帰ってきます」  ぷ と笑っているすがるに何か感じなかったわけではないのだけれど、とりあえずぺこぺこと頭を下げて急いで受付を済ませる。  いつも通り、この研究所はどこらかしこが工事されていて、雪虫への部屋へはまっすぐ行けないようになっていた。  でもこの研究所の通路を熟知しているオレにとってはそんなものは問題にはならない。  中庭を横切り、ぐるりと遠回りになるけれどそれでも雪虫の部屋へ行けることを知っているから、オレはその道を進むだけだ! 「ゆ、き、む、し!」  扉を開けながら浮かれた声で弾むように名前を呼んで……いるオレをセキが冷ややかに見つめる。 「うわっ……セキっ」  一瞬感じかけた気まずさは、すがるにされたネタバラシによってちょっとだけマシにはなっていたけれど、それでも急に以前のように……とはいかなかった。  ちょっと視線をずらして、指先をもじもじと擦り合わせる。 「うわって? なんでオレがそんなこと言われなきゃなの⁉︎」  いつもなら「ひっど」とか言ってからかってくるはずなのに、今日のセキはつんとそう言ったきり、話を続ける気がないとでも言いたげにそっぽを向いてしまっていた。 「あ……雪虫の部屋だからさ、ちょっとびっくりしちゃって、それだけ。それだけなんだ」  すがると入れ替わったのはどうしてだったのか、その間何をしていたのか、聞きたいことはいろいろあったけれど、今はそんな状況でも雰囲気でもない。 

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