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雪虫6 84
「やっ……えぇと、アルファのこと云々はわからないけど……ホントだよ! あの日は……」
そう言うとセキはもご と口篭ってしまう。
口に出すのが憚られるような内容なのかと、喉が詰まるような感触を無理矢理に宥める。
「しずるだって、わかるでしょ?」
「?」
何がわかるかどうか、そんな話し方ではわからない。返事をしないオレに焦れるように、セキは「わかるって言ってよ!」と癇癪を起こすように叫んだ。
「わかんないって」
「わかんないの⁉︎」
「何がわかんないって言ってるのかわかんないって言ってんの!」
電話の向こうで、うーうー唸る声が響いて……
「しずるだって! するでしょ!」
「だから何を!」
「ナニだよ!」
「何?」
「一人でする、アレだよ!」
「アレ?」
ケンカのように大声で怒鳴りあって……向こうで悶える気配にオレはハッと口に手を当てた。
うっすらと感じた予感に、オレは自分がやらかしてしまったんじゃないかと、先ほどのセキのようにうーうーと唸る。
「し、しずるはピンとこないかもだけど、オメガだって性欲はあるんだからね!」
「それくらいわかってる!」
じゃなければ、大神に襲い掛かろうとするセキを何度も見かけたりしない。
「……あと、しずるは雪虫を妖精かなんかだと思ってるみたいだけど、人間なんだよ?」
妖精なんかじゃなくて天使だと言いたいのをグッと堪える。
それくらい……わかる、わかってる、わかっている……はず。
「個人差ってあるかもだけど、雪虫だって年頃なんだからムラムラくらいするんだから!」
「ちょ、ちょ……もう、いいって! もういいから!」
セキは今、真っ赤なんだろうかと申し訳なさに肩を落としながら思う。
友人同士ならそんな話をすることもあるだろうけれど、それがαとΩになると異性同士だ。話すには気まずい話題だって、オレにもいい加減わかる。
研究所の食堂で、時折Ωたちが集まってかなり際どい話をしていて、雪虫もそれに参加しているのも知っていた。
でもそれはセキに連れられてで……雪虫自身はそういったことに積極的ではないと、どこかで思っていて……
儚くて、浮世離れした雪虫には発情期と言う縛りが無ければそういったことと縁遠い存在だと、オレは確かに思っていた。
「えっと……じゃああの日、雪虫が風呂場に入れてくれなかったのは……」
「そりゃ、気まずいよ。俺も今、すごくすごく気まずいし……」
「ごめんって」
「俺がバラしたって内緒にしておいてよ⁉︎」
キツく言われて……そりゃ、オレだって話せないよ と、居心地悪く体を揺する。
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