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第18話 裏切りの代償 **

「んぁっ……煌誠、さ……っっ」 伊吹からスマホを向けられる中、氷岬はずっと、煌誠の舌と掌に翻弄されていた。 罪を責められ、乱暴に扱われると思っていた氷岬は、混乱する。 十年前、両親からαとのセックスを買い取った客たちは、氷岬の反応なんてお構いなしに、ただ勃起したペニスに嬉々として勝手に跨っていた。 そこに一切の感情を挟むことは許されず、ただ気持ち悪いだけで、忌み嫌っていた行為のはずなのに。 「ふ、ぁ……っ」 「……氷岬、痛くねぇか?」 セックスについて以前、濡れた穴さえあればいい、とあけすけに話していた煌誠の指は、触れたら直ぐに傷ついてしまう物を扱うかのように、とても丁寧で、ひたすら優しい。 煌誠のペニスは膨張しきって今すぐにでも狭い穴に捻じ込まれることを期待している。 にも関わらず、当の本人はひたすら時間をかけてじっくりと丁寧に氷岬のアナルを拡張しつつ、氷岬のペニスを優しく扱きながら、全身に舌先を這わせていた。 「……煌誠サンの前戯がこんなに長いなんて、なんか意外っすね」 二人の行為を見せつけられている伊吹が思わずそう呟いてしまうほど、丁寧だ。 男より女のほうが好きなβの伊吹は、元々男同士の行為に興味はない。 そんな伊吹であっても下半身が反応してしまうほど、目の前の肌を紅く染める氷岬は艶かしく、そして綺麗だった。 欲情させられるほどの色気を引き出したのは、間違いなく普段はガサツな煌誠である。 唯一二人の行為を客観的に見ることが出来る伊吹は、煌誠が氷岬のことを本当に大事に想っていることを、嫌でも理解してしまった。 これは、舎弟として可愛がる、というレベルでは決してない。 「前戯なんて、今までしたことねぇよ」 「……はぁ」 当たり前のように返事をする煌誠に、伊吹は首を傾げた。 したことがないから、むしろ加減がわからないのだろうか。 どこからどう見ても、伊吹の目に映る氷岬は、既にトロトロに溶かされている。 「氷岬はΩとは違うんだ、濡れないところに俺のモノを無理矢理入れたら、怪我するだろ」 「煌誠さん、もういいですから、早く終わらせてください……っ」 丁寧にことを進める煌誠に、むしろ氷岬がさっさと終わらせるようせがむ。 煌誠の行為を裏切りの代償だと考えていた氷岬は、甘んじて罰を受けるつもりだった。 しかし、この状態では罰になっていない。 伊吹に撮られていること、そしてその動画で脅されることは当然罰なのだろうが、丁寧な愛撫に否が応でも身体を昂らせられて、喘がないように口を手の甲で押さえているものの、気を抜けば思わず嬌声をあげてしまいそうだった。 「嫌だね。とことんお前を甘やかしたいんだよ、俺は」 「煌誠さ、ぁあっっ」 お尻をまさぐられるのなんて初めての経験で、どうしていいのかわからない。 けれども自分の身体はとっくに煌誠の手でいいところを暴かれ、そして何度もそこを押されて擦られて、わずかな違和感が快感へと変換されていく。 その小さな快感の積み重ねが、大きな快感へと変化していく。 「ひぅ……っ」 「ああ、甘いものは嫌いだが……お前の肌は甘いのに、美味しいな」 煌誠は氷岬の額に浮かぶ汗を、ペニスの先走りを、口内の唾液を、美味しそうに舐めとりながら呟いた。

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