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【過去編】33.川辺のおバカたち

旅に同行する人数が増えたので、ミハイルは先ほど見つけた川に、水を汲みに行こうとしたところ、ザックが「漏らしたから洗濯したい」と言い出し、さらに神父も「水浴びをしたい」と言うので、全員で川へ行くことになった。 「縄を解きますが、逃げようとしたらわかってますよね?」  神父がリトとザックの縄を解きながら、穏やかに微笑んだ。 「……あんた本当に保護する気あんのか?」  リトは呆れながら言うが、神父の魔法からは逃げられないと思ったのか、ザックとリトは大人しくなった。 「リト、もう逃げる気ないんすか?」  ザックはリトに耳打ちする。 「ふっ……今は従う振りをしとくだけだ。魔法だって限界距離があるだろう。神父が隙を見せた時に撒いちまえばいい」  リトは周囲をうかがいながら、ザックに小声で話す。 「ひひ、やっぱリトはそうでなくっちゃ!」  ザックが怪しい笑いをしてから、服を脱いで真っ裸になり、川に着くと一番に飛び込んだ。  その後に、ラスヴァン、神父も服を脱いで、次々に川へと入っていく。  ミハイルは、キャンプ地をここに移そうと、荷物を運んだり、葉っぱを使って簡易的に休める場所を川近くに作っていた。  そんな中、ジェイスはまた岸に座り、膝を抱えていた。 「…………」  ドスッ。  そんなジェイスの横に、リトが座る。 「リト君……川に入らないの?」  リトは口を開き何か言おうとしたが―― 「リトはカッコつけだから、こういうとこで絶対脱がないんすよ」  マッパのザックが目の前に来て言う。 「うるせえな、あっちいけ! 子猿!」  リトがシッシッとザックを追い払うように、手をパタパタさせると、ザックは「キイッ!」とリトに威嚇した。 「…ジェイスにいちゃんは、なんで入らないっすか?」  いつの間にやらジェイスを“にいちゃん”呼びしだすザック。ジェイスは弟のようで可愛いと感じ、悪い気はしなかった。  だが――― 「あ……うん、ちょっと、ね///」  「裸になるのが恥ずかしいから」と言うのもどうかと思い、ジェイスは真っ直ぐなザックの疑問に困ったように笑ってごまかし、視線をそらす。  その様子を、川から見ていたラスヴァンが、バシャバシャと音を立てて岸へ戻ってきた。 「…金髪で下の毛が薄くても大丈夫すよ!おれなんか生えてないっす!」 「ええ!?///」  ザックが自分の控えめな下半身を、堂々と見せつける。  ジェイスの顔がみるみる赤くなる。 「それとも…色素が薄くてピンク色だから恥ずかしいんすか?大丈夫すよ!おれも同じっすから!」  ザックは自信満々な表情で言う。 「えええ!!?///」  ザックの無遠慮な推理と、大胆な発言に、ジェイスは真っ赤になって固まった。  リトがザックに何か言おうとしたが、  そこに、全裸のままのラスヴァンがズカズカとやってきて―― 「バカヤロウ!!!」  コツンッ!  その手はザックの頭を軽くゲンコツした。  ザックは驚いて素早く川に逃げる。 「ジェイスが一番気にしてること言うなッ!!」  腰に手を当てて仁王立ちのラスヴァンが、全裸でどっしりと怒っていた。 「一番気にしてたんすか〜〜〜〜! ごめんなさいっすぅ〜!」  ザックなりにジェイスを励ましたつもりだったが、反省しつつ、水面に泳ぎ戻っていった。  ラスヴァンは隣に座っているリトを鋭い目で見やりながら、改めてジェイスの前に膝をつき、手を差し出す。 「ジェイス、大丈夫か?」  ジェイスは俯いたまま、ぽつりと呟いた。 「……ラスヴァンのバカ///」  ジェイスは耳まで真っ赤なまま、腕で膝を抱え小さくなっていた。 「ジェイス!?」 ラスヴァンはジェイスににじり寄るが、「早く服着て!///」と怒られていた。  隣にいたリトは、(バカばっかだな…)と思って川を見つめた。 ―――  ラスヴァンはしばし考えた。 「下着で川に入ってはどうだ?」  ラスヴァンは下着を履いた後、ジェイスの隣に胡座を描いて座り話しかける。 「衛生的にどうかと思うから…」  俯いてジェイスは言う。 「神父が身体を洗って、子猿は洗濯してるのに?」  ラスヴァンは、川上でタオルで身体を拭く神父に、川下で漏らした下着とジーンズを、激しくバシャバシャと洗濯しているザックを指さす。 「……うーん、でも、下着だとすぐ脱げちゃいそうだし」  いつも八の字眉をして水辺を見ているジェイスが、ラスヴァンは気になっていたが、今日は特に放ってはおけなかった。リトが隣に座っていたから、ヤキモチを焼いていたのだ。  ラスヴァンは、考えた末、リュックから自分が普段多用している、迷彩柄の厚手のバンダナを出した。 「ジェイス、木陰にこい」  ジェイスの手を優しく引いて、ラスヴァンは木の影に連れていく。  そして、ジェイスに 「裸になって股にこれを挟め」  と、言った。  ジェイスは真っ赤になって逃げようとしたが、ラスヴァンはジェイスの手を掴んで説明する。 「これを股に挟んで、腰の左右で強く縛って、褌のようにすれば、川で泳げる」 「!!」  ジェイスはラスヴァンのアイディアに乗ってみた。 「…へんじゃない?」  股間に三角のちまっとした布が付いて、小さい下着のようになっていた。 「エロ……変じゃない。バッチリだ」  ジェイスは嬉しそうに川遊びしだす。  しかし、布が水に濡れると肌に張りついて、お尻のラインがくっきり浮き出ていたので、ラスヴァンはジェイスのそばにくっついて、ジェイスの尻のラインを隠していた。 「はぁ………」  それを木陰で見てるリトはため息をつき、少し寂しそうだった。神父はそんなリトに気づき、鞄の中を一生懸命探り、一枚のスカーフを取り出す。 「リト君、スカーフありましたが、使いますか?」 「!!」  神父の言葉に、川を寂しそうに見ていたリトの心が少し動いたが、彼が持ってきたのは、スケスケの生地に花柄、ラメが入った、艶やか華やかド派手なスカーフだった。 「………いらねえ」  リトはしかめっ面で断った。

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