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【過去編】38. 魔導士と木こり小屋

※シリアスです。 ※物語の都合上、しばらくシリアスが続きますが、またすぐにいつものおバカな内容に戻る予定です。 ―――  城の前は大騒ぎだった。  大門は開けられず、城側の門前に集まった兵士たちは、なす術もなく騒ぎ立てていた。  門への橋が壊れ、城に戻れなくなった門兵隊長は、東の堀の隅にあったイカダを使って、なんとか城側へと渡り、わずかに残った岸で門番たちと作戦会議をしている。  スライムは鈍いようで、兵士たちの動きには今のところ反応していないようだった。 「巨大スライムは、火で蒸発させるか、氷づけにするしかないと聞いたことがある」  門兵隊長が言う。 「うちの城に強力な氷使いはいませんっ!」  門番が背筋を伸ばして返事をする。 「知っとるわ! 火だ、火!! 炎の魔導士、ダリオ騎士団隊長を連れてこいーーー!」  門兵隊長が門の奥を指さして叫んだ。 「それが、また失恋して寝込んでいるらしく…」  奥にいた兵士が言いづらそうに言う。 「隊長がなにをいっとるかー! 叩き起こして連れてこいー!」 「はいーー!」  城側門前にいた兵士たちは、走ってダリオ騎士団隊長を呼びに向かった。 「それと、スライムが黒くなっていた件ですが……最近、堀の掃除を怠っていたせいで、ヘドロが溜まり、ヘドロスライム化してしまったのかもしれません」  門番二人がおどおどしながら言う。 「ば、ばっかもーーんが! 平和ボケしすぎだぞ貴様らーー!」 「「す、すみませーん!」」  城側では兵たちが騒がしくしていたが、堀の外側の草原では、神父がひとりでその場の苦悩を抱えているような状態だった。  ミハイルが心配して声をかけにやってくる。 「何かできることはないか? お前ひとりでこんな……」 「ありません! 危ないので、後ろの木にでも隠れていてください」 「そ、そうか……」  冷たく放たれた神父の言葉に、ショックを受けたミハイルはしょんぼりと木の影に行こうとする。  だが、 「……すみません、今余裕がなくて…… もし負傷者が出たら、介抱してくださると助かります」  その神父の声に、 「おう!!」  ミハイルは大きな身体を細い木に隠し、少し離れた場所から神父を見守った。  その二人の会話を聞いて、ジェイスとラスヴァン、リトとザックも、それぞれ近くの木や岩の影に身を潜める。  ヘドロスライムは、今までただぼうっとしているように大人しく佇んでいたが、 「あ”あ”お”〜! ろ”お”ぁああ”〜!!!」  突如、大きな声を上げ、何か気に入らないことがあったかのように身体をぐねんぐねんと波立たせて、大門の方を向き、近くにいた門番二人を、スライムの手で持ち上げた。 「わああー!」 「助けてくれー!!」  そして―――  ぱくっ ……ごくり  門番を飲み込んだ。  二人の身体は黒く汚れたヘドロスライムの中を巡ったあと、顔の横の上部と、地面に近い下部に固定され、必死に足掻きながらも、なんとか顔だけを外に出した。  スライムは再び神父の方へ向き直り、動きを止めて、またぼうっとした状態になる。 「おお… なんとか生きてる… 良かった… しかし……」  門兵隊長はその状況を見て、慌ててまたイカダを漕ぎ、焦りながら神父側に戻ってきた。 「ラウル神父、このままではあの二人は――」  神父は視線をスライムに向けたまま、静かに答えた。 「……三十分もすれば、身体の深部まで溶けはじめ、スライムと引き離せば逆に命取りになります」  冷静な神父の返答に、門兵隊長はショックを受ける。 「ラ、ラウル神父の魔法で、なんとかなりませんか? 未熟な奴らですが、大切な部下なんです……」  門兵隊長は地面を見つめ、ぽろりと涙を見せた。  神父は、その様子を目を細めて見つめる。 「ダリオさんがくれば、すぐ解決しますよ。  私も様々な魔法を使えますが……  火力が圧倒的に足りません」  神父は自分の手のひらの魔法陣を見つめる。 「ダリオ隊長と、どれくらい違うんですか?」  門兵隊長が悪気なく尋ねた。 「そうですね…… ダリオさんは、一回の魔法の発動で、ルベルナ王国ほどの大きな一国を燃やせる力を持っています。  私の炎と氷の魔法は…… ミハイルさんの木こり小屋を一個木っ端微塵にする程度です」 「言い方あっ!!」  木の影から、ミハイルがツッコミを入れた。

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