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【過去編】39. 救出の一手
シリアスです。
※痛々しい表現があるので、苦手な方は注意してください。
※物語の都合上、しばらくシリアスが続きますが、またすぐにいつものおバカな内容に戻る予定です。
―――
みんなダリオ騎士団隊長を待った。
しかし、やってこない―――。
「何をしてるんだあのお方は…」
門兵隊長をはじめ、その場にいた全員が苛立ちを募らせていた。
それは―――飲み込まれている門番の皮膚や鎖かたびらが、少しずつ溶けはじめていたからだ。
「痛い… ヒリヒリする…」
「臭い…気持ち悪い…助けてえ……」
悲痛な叫びが響く。
門番たちは足掻いて外に出ようとするが、足掻けば足掻くほどスライムに身体が沈んでいき、体力も削られていく。
「ラウル神父… 物理は効かないと言いますが、兵士みんなで一斉攻撃をして切り刻んだり、貴方が火の魔法を連発してみてはどうでしょうか!?」
門兵隊長が焦り声で問いかける。
「……見ていてください」
神父は俯き、手のひらの魔法陣をヘドロスライムに向けて、火の魔法を放った。
ボゴオオンンンッッ!!
スライムの身体の下、地面に近い中央へ、神父が一度で打てる最大量の炎が叩き込まれ、大きなトンネル状の穴が開いた。
「……お”お?… ぶぉっほっお”っ」
しかしスライムにはノーダメージで、まるで嘲笑うような声を上げている。
「攻撃した箇所は一時的に固くなり、トンネル状になりますが……」
神父は門兵隊長にわかるよう、指をさして説明する。
「か、回復が早すぎる!!」
きこり小屋一軒ほどの大きさに開いた穴が、みるみる塞がっていく。
「そうです。どんな攻撃をしても、素早く治癒して塞がれてしまいます。
私の魔力が尽きる方が早いでしょう。正確に打ち込める保証もなく、中の二人を巻き込む恐れもあります
物理攻撃を仕掛けても、兵士の皆さんが巻き込まれないとは限りません」
神父の言葉に、門兵隊長は顔をしかめ、
「申し訳ない…… 私が未熟でした」
深く悲しそうに頭を下げた。
「いえ、わかっていただければ……」
その場にいる誰もが、スライムの穴が塞がっていくのを、ただ見守ることしかできなかった。
しかし―――
その穴はちょうど飲み込まれた門番の横に開いており、足掻いていた門番の指先が、助けを求めるように空洞へたまたま飛び出した。
(あ、あれ…… あの兵士さんの手、ひっぱれるかも)
それを見て、ジェイスが咄嗟に木の影から飛び出し、スライムめがけて草原を駆け抜ける。
「ジェイスッ! だめだっ!!」
ラスヴァンが叫び、追いかけるが、ジェイスはすでに穴に飛び込み、門番の手をしっかり掴んでいた。
スライムの表面は焼かれて一時的に固まり、足場として使える状態だったが、治癒が進むにつれ穴は縮み、動ける範囲が狭まっていく。
「二人とも危険です! 穴はすぐに閉じます!!」
神父の叫びを背に、ラスヴァンも穴へ飛び込む。
「わかってる、すぐ戻るっ!!」
ラスヴァンは返事をしながら、ジェイスの腰に手を回して引っ張るが、ジェイスは門番の手を固く握り、必死に踏ん張っている。
「ジェイス! 無理だ、逃げるぞ!!」
「やだっ! 助ける! っふぬぬ――っ!」
「ジェイス!! っくそっ、おおおお――っ!」
ジェイスがテコでも動かないと判断したラスヴァンは、腰から手を離し、ジェイスの身体が傷まないように手のひらを包むように握り、引く力に自分の怪力を加えた。
スライムの粘着質な体は濃度が濃く、門番の身体にまとわりつき、引き抜くことは容易ではない。
しかし、二人は渾身の力で引き続けた。
身体が半分ほど抜けたが、その反動で門番の顔がスライムの中へ完全に沈み、ジェイスの心は焦る。
「あともうちょっと―― ふぬうう!」
「うおおおーーっ!」
ラスヴァンの首と腕には血管が浮き、今にも弾けそうだった。
その時―――
―――っすっぽん!!
門番の身体が抜けた。
「やった!」
「っ!!」
「ゲゴッ、ゴボッ……!」
喜ぶジェイス、咳き込む門番。
三人はバランスを崩してスライム表面に倒れ込むが、ラスヴァンは素早く立ち上がり、門番を掴み上げてスライムの外へぶん投げた。
バシイッ!
「っと、大丈夫か!?」
それをミハイルが受け止めた。
続いてラスヴァンはジェイスを脇に抱え、スライムの身体から脱出した。
同時に、スライム内の空洞は崩れ落ち、元の穴のない姿へと戻った。
ギリギリで抜け出したラスヴァンとジェイスの身体はヘドロまみれになり、息を切らして草原に倒れこむ。
「大丈夫ですか、二人とも……」
神父が駆け寄り、回復魔法をかける。
「だ、大丈夫です。危険なのわかっていたのにごめんなさい…… ラスヴァンも巻き込んでごめん……」
ジェイスは眉を八の字にして、ラスヴァンと神父に謝った。
「はぁ…… いい、慣れてる」
ラスヴァンは横になり肘を立てながら、ジェイスについたヘドロを払ってあげた。
だが、神父は二人に回復魔法をかけながら考える。
(こんな危険な方法しか、今できる救いはないのか……)
まだ捕らえられている門番を見つめ、神父は解決策のない策に思考を巡らせた。
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