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43.最強になるなんて聞いてねぇ

リトが泣き終え、神父にもらったタオルで顔をごしごし拭いていると、心配していた人達がどやどやと小さな部屋に椅子を持って入ってきた。  神父、ザック、ミハイル、ジェイス、ラスヴァン、どこかで見たおばさん。ベッド周りに椅子をギュウギュウに並べて、なんとか全員座ろうとする。  ここは教会本部の小部屋。五人も入ればみっちりと狭くなる。 「……あれ、座りきれないかな? オレ、外に出てようか?」  ジェイスが気をつかって言うと、 「ここに座れ、上に!」 「え、でも……!」 「いいから!」  半ば強引にジェイスを自分の膝の上に座らせたラスヴァンは、目を閉じ、ほんのり赤くなった頬で、どこか満足そうな表情を浮かべている。  そんな様子のまま、ジェイスはリトの方を見てにこっと笑う。 「えと、リトくん、もう身体だいじょうぶ?」 (その体勢で話しかけてくんのかよ!)  リトは心の中で思わず突っ込んだ。 「どら焼きあるぞ、食うか?」  ミハイルが笑顔で話しかけてくる。そのどら焼きを、神父が獲物を狙うような目つきで、涎を垂らし見ている。  部屋はぎゅうぎゅう詰めだ。 (暑苦しい……)  とは思ったが、リトは悪い気はしなかった。  どこかで見たおばさんは、孤児院の委員長だった。リトと一緒に家出した仲間はみんな帰って来たから安心してくれ、という事と、リトの苦しみに気づいてあげる事ができず申し訳なかった、と涙を溜めながら謝っていた。 ―――  しばらくわいのわいのと話した後、神父は言った。 「皆さん、とりあえずリト君の元気な顔を見て安心したでしょうから、必要な事を話したいので、私とリト君を二人にさせてください」  みんながザワザワと出ていき、リトと神父は部屋に二人になり、少しの沈黙の後リトが口を開いた。 「俺はまたやっちまったんだな……あの、わけのわからない術みたいなのを発動したんだろ?」  俯いて落ち込んでいるリトを見ながら、神父が問いかける。 「あれは魔法です。私が以前使っているのを見せましたが、使える人物は稀です。特に君はすごい力を持っています。ヘドロスライム戦より前から、自分の力に気づいていたんですね?」  神父の問いに、リトは返す。 「そんな凄え力だとは知らなかったけど……たまに無意識にやっちまうんだ。昔の悪夢とか見ると」 「そんな寝小便みたいな……」  小さな部屋がシーンとなる。  しばらくしてまたリトが口を開く。 「自分の力が怖くなるぜ……自分で自分を制御できないんだ」 「そんな厨二病みたいな……」  小さな部屋がさらにシーンとなる。 「……あんた、ちゃんと話し聞く気あるのか?」  リトがちょっとキレ気味に言う。 「ありますよー! バンバン話してください!」  神父はすごい魔力を持った少年を前にして、いささか興奮気味だった。鼻息荒くしている神父を見ながら、 (ミハイルのが聞き上手そうだったな……)  とリト毒づきながらも、一息ついてからまた向き合った。 「物心ついた頃からこの力はあった。変なアザもあって……でも孤児院の奴らには誰にも話せなかった。こんな力、正統派のあいつらには気味悪がられるって……」 「ふむふむ……」 (アザ……魔法陣の事ですね。それで川遊びの時、肌を晒さなかったんですか……みんなに馴染めなかったのも、魔法や魔法陣が原因なのでしょう)  神父は眼鏡をかけてメモを取り出す。 「幼い頃、ザックと寝ている時に、あいつの寝小便を凍らせた事があった……でも、それがあいつ自身だったらと思うと恐ろしくて……だから、これからはザックをあんた達にまかせたくて――」 「うんうん、つまり君は、魔法を使いこなせる様になるために、師がほしいんですね!」  神父は自信満々に言い放った。 「…………え?……いや、ちがっ」 「わっかりました! 私がなんとかしましょう! ちょっくら“上”に話つけてきます!」 「ちょっと待て! “上”って?」 「教会上層部と、魔法省と、孤児院管理委員会です!!」  神父はそう力強く言うと、窓から光を浴びながら歩き出し、バタンとドアを閉めた。 「いや……俺この魔法いらねえんだけど……あいつ、人の話聞かねえな」  神父の迫力の前に言えなかった言葉を、一人になった部屋でポツリとつぶやく。  しかし―――  ガチャッと小さくドアが開いて、神父の顔が覗く。 「君が魔法を使いこなせる様になれば、現在、氷の魔導士最強になるでしょう。ザック君を守れますよ」  ニコッと笑ってから、またドアを閉めて去っていった。 「……は、はあ?」  と、リトは飲み込めない顔をした。

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