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45.派手な訪問者
2026/01/21
ダリオを隊長から団長に修正しました。
すみません。
―――
ラスヴァンが出かけて行った直後だった。
ガシャッ ガシャッ ガシャッ。
「ん?」
廊下で待っていたジェイスとミハイルが、長い廊下の向こうから響いてくる、重厚な鎧の音に気づいた。
「あ、ダリオさんだ!」
見覚えのある銀髪にジェイスが反応する。ダリオも彼らに気づき、タレ目で笑顔になったあと、ジェイスとミハイルに頭を下げた。彼は薔薇の花束を持っていて、その場にふわりと薔薇の香りが広がった。
コンコン。
「失礼します!リトさんいらっしゃいますか?」
リトと神父のいる小部屋を、ノックと同時にドアを開けて強引に入ってきたダリオだったが――
リトは先ほど神父と一悶着あった直後で、ジーンズを履こうとしていた。つまり、まだ黒ビキニの下着姿のままだった。
「あーーーーー!!お着替え中でしたか、失礼しましたあっ!!///」
右手の平で目を覆い、見ないようにしているが、指の間からチラチラとリトの姿を盗み見る、むっつりスケベなダリオ。リトはその視線を感じて、慌てて着替え用の衝立の後ろに隠れた。
「ダリオくん、何しに来たんですか?」
その様子を見ながら、腕を組んで呆れている神父が声をかける。
「あ、リトさんに大事なお話があるんですっ!」
また勢いづいたダリオは、前に突き進もうとした。
「あ、ちょっと、まだ着替えてますよ!」
しかし、ダリオは神父が止める手を払いのけて
「今伝えないと、誰かに奪われてしまう気がして……!」
と言って、神父の声にも止まらず、リトがジーンズを尻までずり上げようとしていた時、
ダリオは勢い余って、つま先が衝立に当たり、バーンと倒してしまい、その向こう側にいたリトと、ばっちり目が合った。
「!!?」
固まるリト。
一瞬リトの下腹部を見つめ頬を染めたダリオだったが、跪き頭を下げて神妙な態度をとった。
「私の名前はダリオ・ルシェル・フォルティッシモ。騎士団の団長をしています。
身長186cm、体重87kg。
エルフ年齢227歳、人間の年齢だと28歳です。
好きなタイプは黒髪、真心があり、気が強そうだけど守ってあげたくなる人。
好きなものは愛、苦手なものはねずみ、です」
突然の激しいプロフィール公開に、リトは何が起こっているのかわからず、動けなかった。
「……不謹慎だと思いますが」
ダリオは顔を上げて、リトを見つめた。
「あの、先日のヘドロスライム戦の時に、リトさんの真心ある涙に触れて……美しいと思い一目惚れしました! 結婚を前提に付き合ってください!!」
ダリオは薔薇の花束を、リトの目の前に差し出す。
しかし、リトは目を見開いたまま、固まっている。一部始終を見ていた神父は、大きなため息をついた。
「ダリオくん……いろいろツッコミどころがありますが……リトくんはまだ、未成年です」
王国で結婚が認められる年齢は、十八歳からだった。
「え……リトさん、まだ未成年だったんですか? ……最近の子は発育がいいなぁ」
リトの着替え姿を、上から下まで舐めるように見てつぶやくダリオ。その視線に、リトはぞくりとしたものを感じた。
「その台詞もギリギリですよ。早く出て行ってください」
ビュウウウッ!!
「うわっ!!」
神父は風の魔法を使って、ダリオを部屋の外へ押し出し、ドアを閉めて鍵をかけた。
部屋中に、薔薇の花びらが舞った。
「リトさん! また改めて出直します!」
ドアの外から叫んだあと、去っていく足音が響く。
「……」
相変わらず固まっているリトの肩に、神父がポンッと手を置く。
「あの人は炎の魔導士最強のダリオ。戦闘の時は頼りになりますが、恋愛脳で、失恋騎士、真面目な変態、と言われる変わった人物なので、気をつけてください」
「………ん………んあ?」
リトは今起こったことを理解できず、手の力が抜けて、またジーンズがずり落ちた。
―――
嵐のような人物が去ったあと――
神父がリトの服装や様子をよく見ると、夏だというのに肌をさすっては、寒そうに身を縮めていた。
また、ヘドロスライムとの戦いもあり、着ていたタンクトップやジーンズはボロボロだった。
「リト君、ちょっとこっち来てください」
「今度はなんだよっ!!」
リトは、服を脱がされた上に変な男からプロポーズされたストレスでイライラし、荒い口調で返す。神父は冷静に、手先でちょいちょいと洋服ダンスの方を示した。
「……んあ?」
リトがジーンズをずり上げながら近づくと、神父は洋服ダンスから一着のローブを取り出した。
「私の使っていたものですが、中々良い装備です。君は氷の魔力を身体に秘めているので、人より寒がりなのかもしれませんね。良かったら使ってくれませんか?」
綺麗な青色の、誰が見ても高級そうなローブ。あたたかそうで、リトの顔がほんのり赤くなる。
「ちょっと試す……」
リトはおずおずとローブに手を伸ばした。
「はい」
神父はにこやかに笑って返す。
リトはクローゼットの前に行き、衝立を立て直して、ボロボロの服をすべて脱ぎ、下着だけになり、柔らかく綺麗なローブに袖を通した。
(!……着やすい……あったけえ……)
指で生地を撫でたり、鏡で後ろ姿を見たり、手を前に突き出して「氷よ集え……!」と厨二ポーズを取ってみたりして、表情をしかめながらも少し楽しんでいた。
しかし、出てきた言葉は――
「……ちょっと、動きにくいな、デザインが古臭えし……」
文句ばかりのリト。素直になれない。
神父はくすりと笑い、少し意地悪に言った。
「わかりました、それではそのローブは、他の誰かにあげちゃいますね」
リトは驚いた顔で神父を見る。
「べ、別に、そんなに悪くはねえよ! 意見を言っただけだ。いらねえんなら、もらっとく……」
「そうですか、助かります」
神父が笑いかけると、リトは腕を組みながら目をそらした。しかしその横顔は、どこか嬉しそうに微笑んでいた。
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