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洗脳の香 4 ※
次に客間の扉の前に立ったとき、条件反射のように体が弛緩した。
鼻がひくつき、あの香りを求める。
重い扉を開くと、カーテンの閉め切られた薄暗い室内に意識が吸い込まれていった。
「おはよう、キリエル」
低い声が響く前に、衣が床に沈む。
全身を晒し、兄の命令を待ち望む。褒美への期待から汗が噴き出た。
香が煙る室内で、しっとりとした褐色の肌に玉のような光が灯る。
鍛え上げられた無駄のない身体を、首元のチョーカーだけが縛っている。
ヴァルデリオ家の――ダリオの所有物である証。
「……お兄様」
裸身のまま跪き、鼻先でダリオの熱を探る。
熱に浮かされた舌が震え、喉から犬のような吐息が漏れた。
緩く立ち上がっている先端をそっと舐め、上目遣いで兄の機嫌を窺う。
ダリオは愉快そうに喉を鳴らして嗤っている。
ほっとして熱を咥えた。
何度も教えられたように、唾液をたっぷりと絡ませ、舌全体で先端を捏ねる。
肉棒を口内に挿し込み喉奥まで迎え入れると、気道が塞がってくらくらする。
陰毛に埋もれた鼻で細く息を吸う度に、兄の匂いが脳を満たし全身が喜びに震えた。
「――んぶ、ふ、う"……っ」
無心で顔を前後に動かし、狭めた口内で肉を擦る。
漏れ出た先走りの味に舌が痺れる。
弟として、尊敬する兄に奉仕できて幸せだった。
ダリオは数回腰を振ると、キリエルの口内からペニスを抜き去る。
ちゅぽ、と間抜けな音が鳴り、ぬめった銀糸が伸びる。
キリエルは口を開け、舌を突き出しながら問う。
「……かけてくださるのですか?」
熱に浮かされた瞳は濁りきっていた。
「……いや、もう少し遊ぼう」
皮手袋をしたままの手が、黒髪を混ぜる。
――もっと、もっと。
褒美を期待し胸が高鳴った。
壁に胸を押し付けられ、尻を突き出すような姿勢をとらされる。
しかし、兄に背中を向けることは恐怖に結び付いている。
古傷が熱を持ち膝が震えた。
「……この傷は、お前によく似合う」
静かに囁かれ、首筋に汗が流れる。
また鞭で打たれるのか。何を間違えたんだろう。
心が委縮し涙がにじむ。
「……ダリオ、お兄様」
褐色の背中を這う革の指先に、痺れるような緊張が走る。
臀部の谷までたどり着くと、手のひらで肉を揉みこまれる。
「あの皇太子とは……したのか?」
瞬間、顔が熱くなる。
今更蘇った羞恥に、言葉が詰まってしまう。
「……は、い」
「それはよかった。喜んでもらえたか?」
「……はい……中に、出してもらい、ました」
炎のような夜を思い出し、腹の奥がじくじくと疼く。
体が覚えている、あの熱、あの泡沫――。
しかし、あれらが現実のことだったのか、今のキリエルには捉えることができない。
「……ここを自ら開いてみせろ」
とびきり甘く低い声が耳の奥に注ぎ込まれる。
指先がひとりでに後ろへ回った。
額と胸を壁に押し付け、右手で蕾を弄る。左手は引き締まった尻肉を持ち上げ、淫らな支度を見せつける。
蕾の縁は赤く腫れ、柔らかく指を飲み込んだ。
カシアンに甘えて縋った肉壺は、湿った水音を立てて蠢く。
指を突き立てくちゅくちゅと出し入れすると、腹の中で快感が溜まる。
無意識に揺れる腰にあわせて、もたげた自分の熱が腹を叩いた。
頬は赤く染まり、吐息は恍惚に濡れている。
「どうした、辛そうだな。……やめるか?」
温度のない革の感触が背骨をなぞる。
「……い、え……ごめんなさい、きもちよく、て……」
このまま頂上へと駆け抜けたい衝動を抑え、挿し込んだ二本の指で胎内を広げた。
腹の奥まで、兄に向かって曝け出す。
くぱ、と開いた中では媚肉が妖しく光る。
「……おにい、さま……っ」
流れる汗が目に染みる。
視界が狭まり、甘い匂いが脳を焼く。
凭れた冷たい白大理石の壁が、火照った胸を愛撫しているようだった。
「…………上出来だ」
いきり立ったダリオの肉棒が容赦なく奥へと押し込まれる。
思わず悲鳴を上げそうになると、黒い指先が口を塞ぐ。
「……んぐっ、ふ、うぅ……っ!」
この淫らな行為が命令なのか、褒美なのか、分からないままに快感を享受する。
ダリオはぬかるんだ奥まで熱をはめ込み、すり潰すように腰を動かす。
いまだ開かれていない奥のその先まで侵される感覚に、恐怖と快楽が混ざり、思わず顎を噛み締める。
「――チッ、まだ躾が足りないのか?」
口内に入っていた指に歯を立ててしまい、引き抜かれた手で後ろ髪を掴まれる。
手綱のように引かれ、腹の中の熱がより深くへ沈み込んだ。
息も吸えず喘ぐキリエルの口に、脱いだ革手袋が押し込まれる。
「……お前が悪いんだぞ」
髪を掴んだまま、子供にするお仕置きのように尻を思い切り叩く。
褐色の体が強張り大きくうねる。
肉壺はギリギリと締め付け、ペニスを抜き差しすると甘く震えた。
「お前は悪い子なのか?兄を悲しませるのか?」
耳元で低く囁き、心身を縛りつける。
キリエルは緩く首を振り涙を散らす。
両腕を壁に付くと、ぎこちなく腰を振り兄のペニスに奉仕を始めた。
時折尻を叩かれると、くぐもった悲鳴をあげてまた熱心に腰を振る。
キリエルは痛みと快楽に襲われるまま、必死に兄に応える。
激しく躍動する筋肉からはじっとりとした熱気があふれ、部屋の温度を上げていく。
羞恥心などかなぐり捨て、獣のように欲望を高める。
脈打つ逸物の血管まで感じ取れるほどに狭く収縮した肉壁が、熱の開放を促す。
従順に、淫らに、兄への奉仕を続けた。
「……っいい子だ、褒美だよ」
ダリオは弟の健気な肉壺にびゅくびゅくと吐精する。
褒美――キリエルの脳が最上級の快楽を分泌する。
激しい躾で乾いた体が甘美に満ちる。
「…………んう……んっ」
中に刷り込まれるように肉棒が抜き差しされると、キリエルは勢いのない精を吐き出す。
甘い、甘い匂い。
全身が震え、力なく床に崩れた。
「可愛い弟だ」
囁きが落ちてくると、一筋の涙が零れる。
拒む理由も、抗う力ももう残っていなかった。
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