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第4話

 シャツのボタンをひとつひとつ外されるたび、胸の奥が熱を孕み、指先まで火照っていくのを萩山は止められなかった。  布地が肌から剝がれる瞬間にひやりと空気が触れると、逆に自分の体温の高さが際立つ。 「……もう熱いな」  崎田が低く呟いて、喉を鳴らした。その声音だけで腹の奥がびくりと震える。 「やっぱり、俺だから……なんだろうな」 「な、に……?」 「萩山の身体が……俺に、俺だけに反応してる。昔も、そうだっただろ」  耳まで赤く染まるのが自分でも分かり、否定の言葉が出ない。  それどころか視線を合わせた途端、心臓が大きく跳ねて苦しくなる。それに、「昔もそうだった」というキーワードも気になった萩山は崎田をじっと見つめたが、彼の感情は読めないままだった。  崎田の指先がゆっくりと鎖骨をなぞると、そのまま腰の奥にまで熱が伝わり、下着の内側はもう我慢できないほど張りつめていた。 「……だめ、もう……」 「いいよ。萩山が嫌だって言うまでは、全部受け止めるから」  安心させるように口づけが落ちてきて、けれど次の瞬間にはαらしい強さで抱き寄せられる。  甘さと衝動が同時に押し寄せて、萩山の身体はあっという間に限界へ追い込まれていった。  恐る恐る背中に手を回すと、崎田の体温がより感じられて恐怖心が少しだけ和らいだ。 「下……つらいだろ。一度抜いてやるから、心の準備ができたら脱いで」  そっとベッドに寝かされて、足元に腰掛ける崎田の瞳はとても優しい。この優しさは誰にでも向けているのだろうかと頭の片隅で考えながら、萩山は下着に手をかけた。  よくよく考えたら、自らの手で恥ずかしい部分を見せて、そして慰めてもらうというのはとんでもないことなのではないか、と思う理性とΩとしての欲望とが天秤のようにぐらぐらと揺れ、欲望が勝った萩山はゆっくりと布を下ろしていった。  ゴムの部分に引っかかった陰茎が、ぶるんと飛び出したときに弧を描くように先走りが糸を引く。  認めたくはないが、別の箇所からも性質の違う粘液が漏れ出ているのに気づいた萩山は途中で手を止めたが、崎田に見られているのを思い出す。 「萩山。ゆっくりで、いいから」  何もかも見透かしたような彼の言葉に、何故か泣きそうになってしまった萩山は覚悟を決めて一気に下着を引きずり下ろす。  ぬとぬととした感触とともに、尻の割れ目からにじみ出た粘液が下着を引き留めていたが、一瞬でその糸は切れた。 「崎田」 「ん?」 「俺がΩってこと、誰にも言わないで」 「言うわけないだろ」  ぎしりとベッドのスプリングがきしんだかと思ったら、崎田の整った顔が自分の股の間に差し込まれる。  口を開けた崎田は躊躇なく萩山の陰茎を口に含み、その刺激で腰が跳ねた萩山は、喘ぎを漏らさぬように口を押さえた。

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