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第5話
形の良い崎田の唇がゆっくりと上下に動くたび、萩山の身体は自分の意思とは関係なく反応してしまう。
男の自分から見てもかっこよく、彼と恋人になりたい人々は大勢いるだろうが、何故こんな自分にここまでしてくれるのだろうか。そう思うと気持ちよさの中に少しの罪悪感が苦味のようにぽつんと落とされた。
それでも、熱が腹の奥からじんわりと全身に広がり、背中がしなる。息を呑むたびに喉の奥が乾き、口元から小さな声が漏れそうになるのを手で必死に押し込めていた。
「ふう、っ……ふ……」
「萩山、気持ちいいか……?」
ふと漏れた甘い声に崎田は反応し、顔を上げて目を合わせる。
瞳の奥には真剣さと優しさが混ざり込んでいて、萩山の心臓はまた大きく跳ねた。昔からちっとも変わらない穏やかで力強いその目に、思わず身を委ねたくなってしまう。
「もう少し……我慢して」
低く穏やかな声と共に、再度崎田は萩山自身を口に含むと、彼の反応を確かめながら先端をねっとりと愛撫して竿部分は手で擦る。
その丁寧さに、萩山は羞恥心だけでなく何故か安心感を覚え、身体の緊張が少しずつほぐれていった。
「っ……!」
鈴口に舌をねじ込まれた刺激に思わず目を閉じると、過去の思い出が一瞬だけ頭をよぎる。
小学校の頃、毎日のように一緒に遊んで笑った日々。もしかしたらあの頃から、自分はずっと崎田に特別な感情を抱いていたのかもしれない。
『俺だけに……反応してる。昔も、そうだっただろ』
崎田の言葉が再び耳の奥で再生されて、萩山の胸が熱くなる。
言葉では言い表せない、甘く切ない感情が萩山の全身を包み込む。思わず手が崎田の背中に伸びてそっと触れると、彼は口角を上げて舌先で裏筋を舐め上げた。
時間経過とともにどんどん息が荒くなる。身体の芯が熱く張りつめ、理性と欲望の境目が曖昧になっていく。
それでも、崎田の温かい手が萩山を導いてくれる。安心感と羞恥心、そして抗えない快楽が入り混じり、混乱した心の奥で小さな笑みがこぼれる。
「大丈夫だよ……萩山。俺が全部、受け止めるから」
その言葉が弾丸のように萩山の胸を貫通し、ぽろりと涙が落ちる。彼の言葉に安心した萩山は、迷うことなく全てを預けた。
目の前の優しい瞳に自分を委ね、身体が自然に反応していく感覚に、Ωとしての欲望とはまた違う、自分でも名前をつけ難い感情が萩山の胸を満たしていった。
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